第23話

 俺の質問を聞いた美保は、質問の意図が分からなかったようで首を傾げた。だが、しっかりと俺の質問には答えてくれる。


「う、ううん。プリクラは撮ってないよ。あの後は、ゲームセンターで遊んだから」


「そ、そうなのか」


 美保から否定の言葉が聞けた俺は、内心ホッとしてしまった。俺が心の中で静かに安堵していると、美保が続きを話し始める。


「それに、ゲームをした後はもう解散になったから。信護君たちより、帰るの早かったんじゃないかな?」


「確かに、俺たちは18時ぐらいまでいたと思うが……」


「あ、じゃあ私たちの方が確実に先に帰ってるよ。坂本君が、そんなに長居できなかったみたいだから」


「そうか……。でも、坂本は悪い奴じゃなさそうだな」


「そう、だね……」


 俺が坂本の印象を語ると、美保は歯切れが悪そうにそう返してきた。何か、引っかかるところでもあったのだろうか。


「……坂本と何かあったのか?」


「え?う、ううん。そうじゃないんだけど……。また、思い出せなかったな、って……」


 思い出せなかった、というのは、坂本についての事だろうか。確か、どこかで会ったことがあるかも、といった話だったはずだ。


「もしかしたら、気のせいかもしれないんだろ?そこまで気にしなくてもいいんじゃないか?」


「そうなんだけど……。どうしても気になっちゃうんだよね……」


 俺がそう言っても、美保は気になってしまうようだ。俺は一瞬悩んだが、すぐに美保に返事をする。


「まあ、ゆっくりでいいだろ。どっちにしても、美保次第だろうし」


「……そうだね。そうする」


 俺の提案を聞いた美保は、少ししてから微笑んでそう返してくれた。そんな美保の微笑みを見た俺も、顔がほころぶ。


「信護君も、これで聞きたいことは終わりかな?」


「ん?ああ。そうだな」


 美保に聞きたいことはこれで終わりなので、俺は美保に頷きを返した。すると美保は、一度俺から目線を逸らしてから、チラチラと俺を見てくる。


「じゃ、じゃあね?その……」


「お、おう。なんだ?」


「さ、さっきの続き、してもらってもいい、かな……?」


「さ、さっきの続きって……」


 美保が上目遣いで俺にそう聞いてきたので、俺は頬を少し赤く染めながらその言葉を復唱した。さっきの続きをしてほしい、とはつまり、また頭を撫でてほしいということだろう。


 そんな俺の復唱対して、美保はコクリと頷いた。俺はその頷きに応じて、美保の頭に手を伸ばす。


「あっ……」


 そして美保の頭を撫でると、美保は嬉しそうな声を出した。そんな美保の表情は幸せそうで、それを見た俺にも微笑みがこぼれる。


 それから俺は、美保の頭を撫で続けた。そしてそれは、まるちゃんと妃奈子ちゃんたちが帰ってくるまで続いたのだった。

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