第18話
「パパ!早く早く~!」
俺はまるちゃんに急かされたので、美保の方をチラチラと見ながら妃奈子ちゃんの頭に手をのせた。そして俺はそのまま、妃奈子ちゃんの頭を撫でる。
「え、えへへっ……!これ、いいね。まるちゃん」
「でしょでしょ!?パパのなでなで、気持ちいいでしょ!?」
妃奈子ちゃんが俺に撫でられながら、顔をほころばせた。そんな妃奈子ちゃんの言葉に、まるちゃんがテンションを上げてそう返答する。
「う、うん……!すっごく気持ちいい……!」
「そ、そんなにか?」
顔をとろけさせる妃奈子ちゃんを見ながら、俺はそう問う。するとすぐに、妃奈子ちゃんとまるちゃんが返事をしてきた。
「そんなにだよ!」
「パパのなでなで、すごいもん!」
妃奈子ちゃんとまるちゃんに、そう力説された俺であったが、そこまでのものなのかと思ってしまう。なぜなら、俺は別に特別な撫で方は全くしていないからだ。
だが、こうして褒められるのは、なんやかんや嬉しい。上機嫌になった俺は、引き続き妃奈子ちゃんを撫でる。
「ふーん……。そうなんだ~……。へ~……」
嬉しそうに撫でられている妃奈子ちゃんとは対照的に、美保の視線がどんどん冷たいものになっていく。そんな美保を見た俺は、妃奈子ちゃんを撫でるのを止めてしまった。
「あっ……」
俺が妃奈子ちゃんを撫でるのを止めると、妃奈子ちゃんは寂しそうな声をだした。そんな声を出されると、俺としてももっと撫でてあげたくなってしまう。
しかし、美保の視線が痛すぎて、行動に移すことができない。そんな美保を見て首を傾げていたまるちゃんだったが、何か思いついたように顔をパッと明るくさせた。
「そっか!ママも、パパに撫でてもらいたかったんだね!」
「「……え?」」
まるちゃんが放った言葉に、俺と美保は同時に呆けた声を出した。俺は驚きからだったが、美保はどうだったのだろうか。
「ねえママ?そうでしょ?」
「そ、そうなのか?美保……」
「ち、違っ!そんなことないよ!?」
「羨ましかったんだよね!ママ!」
「っ……!」
まるちゃんと俺の問いを否定した美保だったが、まるちゃんにそう指摘されて黙ってしまった。まさか、本当に、そうなのだろうか……?
そう思った俺は、美保の表情を見る。美保は少し頬を赤く染めながら、視線を俺から逸らしていた。
「ほらパパ!ママも撫でてあげて~!」
「い、いや、でも……」
まるちゃんに急かされるが、妃奈子ちゃんのように俺から美保を撫でようとはならない。なぜなら、俺が恥ずかしいからだ。
さっきまでの、子供を撫でる行為とはわけが違う。同級生の頭を撫でるというのは、恥ずかしすぎる。
それは美保も同じだろう。恋人ならまだしも、同級生の男子から頭を撫でられるなんて……。
……まあ、俺たちは夫と妻、つまり夫婦なのだが。しかし、恥ずかしいことには変わりない。
なのにまるちゃんが、俺に美保の頭を撫でさせようとする。俺は戸惑いながら、美保の反応を待った。
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