イヴちゃんのお父さんの、えっと、なんだ?

 全くもって、気に入らない。よくも舐めた真似をと、私は憤慨した。

 しかし。なんということだ。この青二才の、私の娘を汚したとばかり思っていたこの青年が、この見事な絵を描いたというのか!

 やられたどころの話ではない。これは、まさしく、我が娘、舞依、お前そのものだ。お前のその美しさ。それは誰譲りのものなのか。そうだ。お前の母親だ。その面影が、重なった。我が娘と共に、亡き我が妻が、絵の中に立っていた。

 最愛の我が妻よ、お前はいつだって、私の世間に対する尖った態度を諫め、慰め、励ましてくれた。美しいお前の、その内面より溢れ出る、その美しさを! 私は忘れていたというのか?! それは舞依にも、こうして受け継がれていたというのに! ああ、我が娘よ!

「おおお! 舞依! 私を許してくれ!」

 私が汚れていた。曇り、汚れきった目で、お前を見ていた。許しておくれ!

 顔が濡れているぞ。泣いているのか? おお、私が悪かった! 恥入るばかりだ。涙を流すべきは私のほうだ! 悔恨の涙を! どうか、私の頼みを聞き入れてはくれまいか! ああ、舞依、許しておくれ!






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