第35話 インプルVRMMORPGファーストアドベンチャー18

上空のカプセルに空いた穴からはどんどん放射能汚染物質を含んだ霧が流れ込んで来て地上の視界を塞いでいた。



そこでエアバニー達を待って待機するイ特の車両。



施設側もあまりの出来事に戦意を喪失。



霧を避けて建物に籠もる者、投降する者達はいても戦おうとする者はいなかった。



エアバニーの降りていった大きな穴がただ不気味にその口を開いていた。



そんな暗い穴の底で未だ輝く三人の姿があった。



その輝く姿と対照的に硬い表情のショウ。



アナトが人類の敵、イシュタラだと知らされてショウは困惑していたのだ。



ショウ「アナト、君は本当にイシュタラなのか?確かに君は強いけど見た目は普通の女の子にしか見えない。。」



アナト「ああ。私達は母イシュタル様から生まれた人系のイシュタラだ。」



ショウ「ヒトケイ?」



アナト「そうだ。前にも言ったがかつて母様はここの者達と同じ様なナノマシーンの実験体だった。人の他にも勿論多数の動物もいた。それらが捕食し能力の移譲し合って様々な異業種になっていった。」



アナト「当時の実験は今よりかなり荒っぽいもので多数の死者と激痛を伴ったと聞く。」



アナト「ある日母様達は反逆を起こし実験施設を抜け出した。」



アナト「そして戦いの末、当時極寒の世界だった外の世界に飛び出した。」



エアバニー「その時の戦いで大型のカプセルは殆ど潰されて今の小型カプセル『新世紀』が始まるんだ。」


ショウ「教科書に載っている歴史と違う。。」


エアバニー「そう、我々の知っている歴史は恐らく改ざんされている。イシュタラの事を記録した情報が人間側には一切残っていないんだ。」


エアバニー「ナノマシーンもそれから危険視されて封印された。ここ81区のこの場所ででエンキ博士の研究所が見つかるまではな。」



ショウ「ここで?」



エアバニー「まぁ、お前さんがさっき吹き飛ばしてしまったがな」



ショウ「。。。」



アナト「エアバニー、話の途中だ。」



エアバニー「おっと、失礼!」



ショウ「それで脱出した後はどうなったの?」



アナトは頷く。



アナト「強化された身とはいえ大変な旅だったらしい。そして海に繋がる温泉を見つけてそこから海の底にまだ凍っていない領域を見つけた。」



アナト「そこには死滅したと思われていた魚や生き物たちがまだ少し残っていた。」



アナト「母様達はそこに光を与えて楽園を作った。」



ショウ「それが。。イシュタラの国。。?」



アナト「そうだ。」



アナト「永遠の安寧を得た様に見えたそんな楽園も時を経てまた人間達のせいで滅亡の危機を迎えた。」



アナト「氷河期が突然終わり、国が滅びて放置してあった大量の核廃棄物が一斉に海に沈んだのだ。」



アナト「海は地獄に変わった。」



アナト「耐性がある私達はいい。しかし魚や耐性を持たない者達にとってそれは死を意味していた。」



アナト「母様は自らの命を削ってイシュタラの国全体に防護膜をはり、さらに弱った生き物たちに命尽きるまで耐性を移譲し続けた。」



うつむいて背を見せるアナト。



ショウ「。。。」



イ特隊員達「。。。」



アナト「激情にかられた者達は次々に人間達のカプセルを襲った。」



アナト「カプセルを落とすのは簡単だ。外からカプセルに穴を開けるだけでいい。外は自分達の撒き散らした放射能だらけだからな。」



アナト「そして私と兄様もここ81区を破壊する為にここへ来た。」



ショウ「。。。でもしなかった?」



アナト「ああ、思いがけずエアバニー達に会ってあの忌まわしき研究とヤツが復活している事を知ったからだ。」



ショウ「ヤツ?」



アナト「200年前にナノマシーンの研究を暴走させた張本人、エンキだ。」



ショウ「ここで見つかったってそのエンキって人?」



アナト「そうだ。」



ショウ「でも、200年ってどうやって?」



アナト「エンキはナノマシーン研究と自身をタイムカプセルにして冬眠していたのだ。」



アナト「復活したエンキは当初こそ不老不死の研究として技術提供していた。」



アナト「が、そのうち83区出身の研究者を通して83区の政府の要人と接触する様になると研究所を離脱し自身は83区へ拠点を移し残った研究者達でサークルアンデッドを発足させた。」



エアバニー「サークルアンデッドは83区の強力な援助によって81区全体をインプルを使ったナノマシーンの実験場にしてしまった。」



ショウ「それってまさか」



エアバニー「それがインプルVRMMORPGファーストアドベンチャー18だ。」


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