第12話 地下10階
アナト「そうだな。今度はお前の実力を見せてもらおうか。女の影にばかり隠れていては男が廃ろう?」
言われてショウはちょっとムッとして
ショウ「アナト、わかったけどいい加減名前で呼んでくれ他守さんとかショウさんとかあるだろ?年配者をちょっとは敬ったらどうなんだ?」
意外と強気なショウに少し驚きながらもアナトは
アナト「外の敵を何とかしたら呼んでやるよ。」
と相変わらずの余裕綽々だ。
ショウ「見てろよ!」
と、ショウは扉のあった穴に向かった。
ショウはコチンダがから皮膚が硬化している事を告げられていたので多分大丈夫だと言う打算があった。
それに今はゲーム内と同じく魔法が使える。
ショウは手始めに外の敵をターゲットした。
ショウ:よし!ちゃんとターゲット出来るぞ!
そしてショウはとこからともなくブラックワンド(杖)を取り出した。
ショウ「物理攻撃無効!プロテクト!マジックウォール!」
茶色、水色、エメラルドグリーン、次々と色鮮やかな魔法陣が足元に現れてそれと同系色のオーラがショウを包む。
それぞれの魔法の効果をイメージする視覚効果としてショウの周りに様々なベールになってショウを包みこんだ。
幻想的に淡い光を放ちファンタジーの世界観を具現化したかの様だ。
自分の守りを固めたショウは次に壁の向こうの敵に魔法を放つ。
次の詠唱ポーズを取ると今度は黒い魔法陣が現れ!紫色のオーラのような物が湧き上がり今度は敵に向かって壁をすり抜けて降り注ぐ。。
ショウ「スリープ!」
そのまんまの催眠魔法である。
そして魔法の視覚効果が収まる頃、外の男は立ったまま眠った。
ショウは興奮気味に外に出てそれを確認した。
ショウ「うぉぉ!スゲぇ!ホントに立ったまま寝てる!ゲームのまんまだなぁ。。」
ショウ「よし!さあ行こう!アナト!」
と意気揚々と言ったところでアナトの氷のように冷たい視線が突き刺さっている事に気がついた。
アナト「。。。おい。」
ショウ「あれ。。?」
アナト「散々今から戦うぞみたいな勿体ぶった前振りして何だこれは?」
ショウ「いや。。これなら誰もケガしないかと。。」
アナトはガッカリした様子でため息をついた。
そして防護壁に向かい、右の掌を壁に向けた。
空気が見る見るビリビリとしてくるのを感じる。
そして驚いている暇もなくアナトの全身から稲妻がほとばしり掌の前で玉になってそこから一気に壁の方へ雷(いかずち)が放出した。
ドーンと言う落雷の様な雷鳴が響き、目の前の壁とその向こうにある数枚の防護壁を一撃で砕いた。
アナト「せめてこの位やれ。お前」
ショウ「ぐはぁ。。」
ショウ:魔法も使わずにこれか。。もうこの人何でもアリだな。。だが、ここで終わっては俺も男が廃る。。
ショウ「そ、その位俺にだって出来るさ!」
と、ショウはアナトが砕いた反対側の防護壁へ向かい壁の前に立つ。
ショウ:黒魔道士レベル99。派手で一番威力があると言えば。。
そして目を閉じて魔法の詠唱ポーズを取る。
ゴォォォッという音と共に足元に赤い魔法陣が現れるといつになく長い詠唱時間が過ぎる。。。
ショウ「フレイムⅥ!」
火属性の上級魔法が発動し杖の先端あたりからショウの身の丈はあろうかという巨大な炎の柱を放った。
熱風と煙が吹き替えした後、目の前の煙がゆっくりと晴れて視界がクリアになるとアナトと同程度に防護壁が廊下の奥の方まで破壊されているのが見えた。
もちろんゲームではこんな風にダンジョンや構造物の破壊は出来ない。
しかし現実の世界であれば火が付けば燃えるし水がかかれば濡れるのである。
但し、出した火や水は魔法の効果が切れると消えるようで瞬間的なその爆炎はかろうじて火事を引き起こしたりはしなかった。
ショウ:うわぁ。。リアルだとこんな感じなんだ。。電撃と来たら炎かなと思って勢いで打ったけどよく考えたら地下で火事になる系はヤバイよな。。
ショウはホッとしてアナトの方を向き
ショウ「どうよ?!」
と強ぶって見せた。
アナトはやれやれといった感じて
アナト「お前はバカか?これから探索に行くのに火事になったらどうするつもりだ?折角の情報源を焼失させる気か?」
と言いつつも少し納得したかの様な微笑みを見せて
アナト「威力はまぁまぁだな。。しかし前置きが長い。単体での戦闘使用は無理だな。」
と分析をするアナトに
ショウ「えーっと。魔法使いとはそういう物です。。」
と不服そうなショウ。
ゲームなら魔道士が盾役なしに単体で狩りやボス戦に出ることはない。
詠唱中に攻撃されれば詠唱が中断されてしまい、そのままボコられて終わりだからだ。
そしてスリープが解けてそれらを目の当たりにした男は腰を抜かしたように床に沈み、叫んだ。
男「な、何なんだお前らは!?こんな検体は見た事がないぞ?」
アナトは顔をしかめて男を軽々と片手で掴みあげた。
胸元をねじり込むように持ち上げそのか細いとてもそんなパワーを秘めているようには見えない腕の先に握りしめた拳の先に男の全体重がかかる。
ミシミシと音を上げ苦しそうにする男の姿をまるで害虫でも見るかの様な蔑んだ目で見つめながらさらに締め上げてアナトは男に問いいかける。
アナト「貴様の言う検体とは貴様らの下らない実験の為に犠牲になった人間や動物達の事か?」
締め上げられて顔を高揚させながら男は答える。
男「うぐぐぐぐ。。下らないとは何だ?こ、この研究が無ければ人は滅ぶしかないのだ。。氷河期だけならまだしも今は外の放射能が徐々にカプセルを冒し、さらに次々にイシュタラによる侵略になすすべも無く晒されている。これは生き残り為の種の闘いだ。。」
アナトは無表情のまま。
「そうか、それがお前たちの後付けの正義か。ならば現時点で適性のないお前たちはもう既に滅びの決まった劣等種だ。その様な無様なあがきなど必要ない。」
アナトがそう言い終えるとまたアナトの目の前から跡形もなく男は消え去った。
アナト「他守、次はせめてすぐに動き回れない様にしておけ。」
ショウ「おいおい、呼び捨てかよ!少しは年長者を敬ったりしないの?」
アナト「希望通り個体名で呼んでやったのだ。感謝しろ。」
ショウ「。。個体名ってなんだよ。。へいへいわかりましたっ」
その赤く光る目を渋そうに細める他守にヤレヤレと言った感じでアナトは「それに、言っておくが私の方が年長者だ。」
と言われてショウは目を丸くする。
どう見ても10代そこそこのアナト。
若く見えると言っても20歳超えている様には到底見えない。
ショウ「はぁ?あのさ、じゃあお前一体何歳なんだよ?その姿も俺のこの姿みたいにそれもキャラメイクかなにかなのか?」
と、アナトに詰め寄るも
アナト「フン。オムツ野郎と一緒にするな。私はお前と違ってこれが母様から頂いた生来の姿だ。それにお前たちの常識では女性に年齢を聞くのは失礼なのだろう?」
と言いながらショウに顔を近づけて
アナト「全くモラルのない奴だな。」
と言うと振り返って「さあ行くぞ!」とテクテクあるき出した。
慌ててショウもついていく。
ショウ:チクショウ!なんか常にスゲーバカにされてる気がする。。
二人はエレベーターの前で止まるとアナトが下のボタンを押した。
アナト「リフトは生きている様だ。」
しばらくしてエレベーターの扉が開くと二人はお互いの顔を確認して静かに乗った。
地10と書かれたボタンを押すと扉が閉まりウィーン。。というモーター音がしてエレベーターは降り始めた。
しばらくして『ポーン』という電子音が鳴り、エレベーターの扉が開いた。
中は明るく他の階と同じ色のシーリングライトが輝いている。
しかし他の階と違ってここはエレベーターを降りていきなり白い小さな小部屋があるのみで、正面には他の階とは明らかに違う音楽スタジオ並に重厚なそれでいて白く清潔な扉が、ただひとつポツンとあたかも来たものを誘い込むかのようにただそこにあった。
二人はエレベーターを降りると先ずはこの扉に目がいった。
この重厚な扉は恐らくは機械仕掛けの効かない手動で開閉するしかない扉で、見えている金属製の取っ手を90度にまわし手前に引く際に防音の為か格闘技の防具かボクシングのグローブのような、中にスポンジか綿の詰まったような扉の縁の摩擦に耐えながら開閉を余儀なくされるそんな感じの扉だ。
恐らく金森はここにいるか、もしくは別の所から自分達を見ている。
何か仕掛けてくる可能性はある。
つまり、これをくぐってちゃんと閉めなければ閉じ込められる可能性は低い。
そう思わせると同時に、こんな地下でどうしてこんな防音の効いた扉が必要なのか不自然に思う。
ショウ「なんでここだけこんな防音?みたいな扉なんだ?」
アナト「ここに騒音はない。あるとしたら中の音を外に漏らさない為か。。」
ショウ「中の音?」
アナト「例えば悲鳴や断末魔がエレベーターを通して各階に漏れないためかもな」
ショウ「おいおい。。」
ショウはその強面なその悪魔顔とは裏腹に内心では段々奥に進んで中を見るのが怖くなってきた。
そんなショウを気にも止めずアナトはまたその重厚な扉を音もなく、そして忽然と消し去ってしまった。
すると中にはまた小さな今度は壁が金属質に少し光って見える部屋とセキュかリティロックのかかった扉が見える。
アナトは重厚な扉のあった四角い穴から中に入るとその扉もあっけなく消し去った。
ショウ「アナト、お前は大泥棒にも脱獄王にもなれるよ。。」
アナト「そんな物と一緒にするな。中に入るぞ。」
と更に奥の部屋に向かおうとした時、突然キィーン!と言う高音のハウリングの様な大音量が鳴り響き三半規管が狂わされて二人はその場に膝をついた。
と、同時にその部屋全体の水分が加熱されはじめる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます