私、○○になっちゃった!?

さて、1時間ほど経過した頃です。ミリアにして早い方で話を区切りました。


「お嬢さん!いつでも待ってるぜ!シルフィード辺境村だな!?覚えたぞ!」

「王都の武器屋さんも素晴らしかったです♪ぜひ、またお話させて下さいね!」


武器屋のおっちゃんとワイワイとマブダチになったミリアの趣味に少し引きながらも、気になるものを見付けて尋ねてみた。


「すみません。これはどういうものですか?」


そこには変わったデザインの杖があった。先端には丸いワッカがあり中には十字架の細工がしてあった。

「おお、そいつは試作中の杖でな。魔力を増幅す魔石が埋められている所は一緒だが、そいつは音声も増幅する事が出来るんだ」

「音声を?」

「ああ、例えば演説の時などには普通なら風魔法を使って声を遠くまで響かせるが、こいつは魔力さえあれば風魔法が使えなくても、声を遠くまで響かせることが出来る品物だ。しかも、使わないときはアクセサリーぐらいの大きさに小さく出来るから便利だぞ?」


おおっ!なかなか良いじゃないですか!?


「素晴らしいですわ!これ買います!」

「小さく出来るのと、声を響かせる以外は普通の魔法使いの杖だが、良いのかい?それと上質な魔石を使っているから少し値も張るが……?」

「ふふふっ、商売が下手ですね。値段が高く、声を響かせる機能のせいで売れ残っていたのでしょう?大丈夫です。買いますわ!」


「よし!わかった!出来る限り安くするぜぃ!」

「ありがとう!」


こうしてシオンは、魔力を動力にする【マイク】を手に入れたのでした。

武器屋を出ると、中を伺うようにまだまだ大勢の人々が待っていました。まるでアイドルの出待ちみたいですね♪


「1時間以上いたのにまだ大勢いるね………」

「まぁ、白龍を連れていればこうなるわな?」

「だったら良い考えがあるわ♪」


えっ!?


ミリアは大胆にも、すぐ側にある噴水広場で『歌う』事を提案したのです!


無理だよ!?いきなり何を言っているの!


「あら?いつもシオンは大勢の前で歌いたいと言ってたじゃない?良かったわね!夢が叶って♪」


のぉぉぉぉおおおおおーーーーーーーー!!!!!


この衆人環視の中で歌うのは確定ですか!?


「あ、あの~時間も無いしまた今度じゃ………」

「ふふふっ、こんなに注目されていては、お買い物なんて出来ないわよ?諦めて歌いなさいね♪」


あああぁぁぁ…………


せめて心の準備が欲しかったよ~orz


長年の培った貴族特有の優雅さを出しながらクロウに手を取られて歩いていく。小声で、なんかバージンロードを歩いているみたいだね?と言ったら、馬鹿か!と怒られて、ミリアが笑っていたの!もうっ!


噴水の前に来ると、買ったばかりのマイク杖を地面に差して辺りを見渡した。肩にいる白龍のシルフィー効果は凄まじくて、どんどん人が集まっていったよ!なんで!?


「シオン、そろそろやらないとマズイかもね?」


ここまで空気だったイオンさんがピアノを取り出し、準備OKな状態になりました。


はぁ~、なんでこうなった!?

女は度胸だよ!やってやんよ!!!!!


シオンは目を閉じて、深呼吸するとイオンさんの演奏と共に歌いだした。

【希望の光】

作詞 naturalsoft

『限り無い願いを胸に秘め___歩き続ける

目の前がイバラの道でも___仲間と共に歩んでいく

絶望を拒絶するのは___諦めていない証

希望の光を目指して願いを込めて___唄い続ける


限り無い想いを心に秘め___走り続ける

後ろを振り返りながら___正しき道へ歩んでいく

絶望を繰り返すのは___諦めていない証

希望の光を指差して___唄い続ける


希望の重さに押し潰されないように

仲間と共に支え続ける』


シオンの歌はマイク杖で、王都中に響き渡った。不思議と、目の前にいる人々にはうるさ過ぎず、遠くの人々にも適切な音量で響き渡ったのだ。


シオンの姿を見ながら歌を聴いていた人々は皆、感動の余り泣いていた。遠くにいた人々も素晴らしい歌声とメロディー、歌詞に耳を傾けて余韻に浸っていた。


すると奇跡が起こった!シオンの【唄】を聴いた王都中の人々の怪我や病気が治ったのだ。無論、全ての怪我や病気が治った訳ではないが、数百、数千人規模でその効果を実感したのだ。

この奇跡で、ある高位貴族の令嬢や子息の怪我や病気が治ったことで、シオンの運命が変わっていく事となる。


後に、シオンの最初の奇跡といわれる【原初の奇跡】として、歴史に残る事例となった出来事でした。


えーーー!!!!!そんなの聞いてないよ!?


「流石はシオンね♪王都の人々も虜にしちゃったわね♪」

「ちっ、良い歌じゃないか!」


あっ、クロウも涙ぐんでいるね!

唄い終わって、どんどん人が集まってくるので早々に立ち去る事にしました。私が馬車の方へ向かうと、モーゼの海みたいに人々が割れて道を作ったよ!


急いで馬車に乗って予定を切り上げて、別宅へと戻るシオン達であった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

エルネシア王国

王城にて─


「国王様!今の歌声をお聴きになりましたか!?」


国王の元へ次々と報告へやって来る騎士や貴族達がいた。


現国王は30代の若い王様である。前国王である父親が相談役として下がり、息子である王子に王位を10年前に譲ったのである。


「ああ、聞こえたよ。とても素晴らしい歌声だったな」

「あの歌声は王都中に響き渡ったようですぞ!」

「貴公でその報告は3度目だ。もう知っている。何が問題なのだ?」

「正体不明の歌人が王都に現れたのですぞ!危険ではないですか!」


この貴族の言うことも一理ある。歌人の唄う聖歌は数百、数千もの人間に効果発揮するのだから……


国王は慌てている貴族を冷静に見つめ、落ち着いた態度で言い放った。


「すでに探索の指示は出している!上に立つものが慌めくな!」


国王の鋭い言に、謁見の間は静まり返り落ち着きを取り戻した。しかし、その後にやってくる報告にまた騒ぎが再発する事になるのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【後書き】

愚者の声

「ちょっと長くなりそうなので区切りますね」

シオン

「王都偏はいつまで続くのですか?」

愚者の声

「もう少し掛かるかなぁ~」

シオン

「早くダンジョンに戻りたいのよ!」

愚者の声

「おお!すでにダンジョンマスターへの責任感が!?」

シオン

「早くお家に帰りたい~」


愚者の声

「ただのホームシックですか………」




『よろしければ感想、お気に入り、よろしくお願いします!』


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る