この架空ライトノベルがすごい!2021

緒賀けゐす

「この架空ライトノベルがすごい!2021」投票結果

【結果発表】

《1位》『穿ちのヨギラ、月を射よ』(遠藤最涯、ヴァヴァヴァ文庫)1294pt

《2位》『リルズベリー・ロッカーガールズ』(縦坂横道、プルート文庫)1138pt

《3位》『ムジカ・レトリックの園』(辺見ユウ、FE文庫)956pt

《4位》『これは本物の百合ハードSFです。』(ロジカル玄々、ギギギ文庫)951pt

《5位》『眠れない俺が作ったおやつを君は夜中に食べてくれる』(君島語、コネクト宙ノベルス)894pt

《6位》『未来少年ヨシハル』(国境光秀、ヴァヴァヴァ文庫)853pt

《7位》『清楚でおしとやかな詩織お嬢様の必殺エナジードリン拳』(いとう、剣戟文庫)783pt

《8位》『ギャラクシースター丸忍法帖~星間忍者大戦』(承地九倍,ジェフリー・モンド、三門出版BOOKS)622pt

《9位》『こころのなかの怒れる幼女』(あずみN、忠永社イエロー文庫)541pt

《10位》『君がオオカミ少女になるまで』(群成たぬき、LED文庫)502pt


  *  *  *


【編者総評】

 今年度の架空ライトノベルはこれまでにない賑わいを見せた。間違いなく、ここ数年で最も豊作の年だろう。勿論良質な作品の存在を前提としたうえだが、今年はそこに、「面白さ」を周囲に伝えていく読者サイドの活動が活発化したことが界隈の盛り上がりに大きく影響しているといえる。

 これまであまり紹介の場が無かった架空ライトノベルを、ブログやYouTubeチャンネルを利用して布教している愛好家の姿を多くの読者が目にしたはずだ。面白い作品がここにある――ひとりひとりの熱意が風を生み寄り集まって吹きすさぶ。

 そんな2020年において最も風を吹かせた作品こそが、今回1位に輝いた『穿ちのヨギラ、月を射よ』であった。実力派作家である遠藤えんどう最涯さいはてが描く力強くもどこか郷愁を感じさせる本作は、読者の心を鷲掴みにし、架空ラノベの歴史に新たな1ページを刻んでみせた。

 その『穿ちのヨギラ、月を射よ』に続いて2位に輝いたのが、かくラノ常連作家・縦坂横道の『リルズベリー・ロッカーガールズ』だ。デビュー作である代表作でもある『邪ゼブラ』シリーズが完結を迎えた本年であったが、単巻完結ということもあり新規のファンが集まり、この結果となっている。普段協力者票を多く集めることによってランクインする彼にとって、今回は珍しいケースとなった。願わくばこのまま、架空ラノベのメインストリームとなってもらいたい。

 3位には『ムジカ・レトリックの園』がランクイン。未だ語り継がれる大ベストセラーとはいえ、最終巻刊行から6年の月日を経てこの順位に入る根強さにはやはり目を見張るものである。その他ランクインには届かなかった作品にも、数多くの名作があった。それらについても、今後脚光を浴びる機会があることを望むばかりである。

 2021年の架空ラノベはどうなるのか、今から胸が高まって仕方がない。


  *  *  *


【結果詳細・投票コメント】


 1位『穿ちのヨギラ、月を射よ』(遠藤最涯、ヴァヴァヴァ文庫)1294pt

「独特の世界観に引き込まれました……!」(カルシウム不足のひと)

「名作、文句なしの一位投票」(名称未設定819)


 2位『リルズベリー・ロッカーガールズ』(縦坂横道、プルート文庫)1138pt

「最高の関係性が最高の文章で描かれておりました。傑作です」(緒賀)

「自分の中での不動の第1位です」(紛失物探太郎)


 3位『ムジカ・レトリックの園』(辺見ユウ、FE文庫)956pt

「禁書になったほどの影響力はすさまじいです……!」(カルシウム不足のひと)

「発行年としては少し前ですが、コロナ、テロ、出禁、聖者の更新、間違いなく今年を象徴する作品だと思います」(匿名)


 4位『これは本物の百合ハードSFです。』(ロジカル玄々、ギギギ文庫)951pt

「おそらくはライトノベルの許容限界」(緒賀)

「奇書、ランクインして可能性を示して欲しい」(名称未設定819)


 5位『眠れない俺が作ったおやつを君は夜中に食べてくれる』(君島語、コネクト宙ノベルス)894pt

「デフォルメキャラ絵のストーリー回収が素晴らしかったです……!」(カルシウム不足のひと)

「思わずコスプレしてアップルパイ作りました」(紛失物探太郎)

「青春時代の息苦しさを感じさせる説明しすぎない文章、文章の足りない部分を補ってその先を見せてくれる挿絵イラスト、おまけのレシピコーナーにまで、主人公たちへの優しい目線が見えます。ラノベという媒体を最大限活かした青春小説です。」(匿名)


 6位『未来少年ヨシハル』(国境光秀、ヴァヴァヴァ文庫)853pt

「熱いSF時代ラノベです……!ヨシハルはヒロイン。」(カルシウム不足のひと)


 7位『清楚でおしとやかな詩織お嬢様の必殺エナジードリン拳』(いとう、剣戟文庫)783pt

「清楚なお嬢様がエナドリ飲んで戦う! 最高ですわ!」(緒賀)

「アルギニン・バッド・タイム!!!!!!!」(架空の妹)


 8位『ギャラクシースター丸忍法帖~星間忍者大戦』(承地九倍,ジェフリー・モンド、三門出版BOOKS)622pt

「登場するキャラクターが「第四壁遁の術」でこちらへ話しかけてきた時めっちゃ笑いました」(架空の妹)

「忍者スペオペすぎる」(紛失物探太郎)


 9位『こころのなかの怒れる幼女』(あずみN、忠永社イエロー文庫)541pt

「怒りを面に出すことを良しとしない社会の風潮に対して、あくまで優しく、しかしまっすぐに異を唱える本作。否定するでもなく、なだめるでもなく、あるがままに一緒に怒ってくれる存在の素晴らしさに胸を撃たれました。疲れたサラリーマンにもおすすめです」(ウミウシ)

「「ぶっとばちゅ」が最高。きょむちゃんありがとう」(紛失物探太郎)


 10位『君がオオカミ少女になるまで』(群成たぬき、LED文庫)502pt

 ※コメントなし。


  *  *  *


【その他・投票コメント】

『らのし尊し軽述べ草子』(ギース・オースティン延平、JKレスバ文庫)

「本山らのさんの二次創作ならではの設定がとても生き生きしていました!」(架空の妹)


『それは鈍色のウガンダのように』(跡井塔・山西ファイナル文庫)

「続刊記念」(背筋崩壊太郎)


『きみは風前の灯火』(言言、ハイパードライブ文庫)

「風前さんが消えてしまうこと、それに抗えないこと、全部が丸ごとしんどい青春でした。そして、あのラストシーン。自分は何を諦めて青春を終わらせたんだろう、と考えてしまいます」(匿名)


『すっぱい教室』(梅村、フフフ地味文庫)

「タイトル通り酸味の効いた文体、思わず口をすぼめてしまうような意表を突く展開、そして涙・涙の意外な結末に驚かされます。作中の決め台詞「クエン酸!」は間違いなく癖になる。あなたも叫ぼう「クエン酸!」」(ウミウシ)


『死に戻った幼馴染がシンプルに怖い』(E藤U佑、フシギ文庫)

「死にっぷりがすさまじくてとても笑いました(メンタルの削れた顔で)」(カルシウム不足のひと)


『冒険幻想イマジナリウム』(龍ヶ崎理史、ゼッタイムテキ文庫)

「いい作品なので少しでも知る人が増えたらいいなと」(名称未設定819)


『【ゆるぼ】うちの兄貴を消す方法 1.百合の間に挟まるな』(柊まるみ、所沢ミスティック文庫)

「主人公八幡澪には七人の兄がおり、それぞれが七つの大罪になぞらえた強烈なキャラクタを持っている。現時点で3巻まで刊行されているが、今回あえて1巻を挙げたのは、ボスキャラとなる《色欲》の透が性格・能力共に最凶過ぎるためである。百合の間に挟まるという刑法違反の重罪を平気で犯すのだが、異世界転移によるチート持ちのため警察すらねじ伏せる暴虐っぷり。女子高に通う澪の周りは百合の花園になっているが、持ち前の外面の良さやチート能力によって次々に間に挟まれていく透に蹂躙されるのが痛々しい。ライトノベルらしい軽快な文章でスラスラと読める一方、並の手段では排除できない透をいかにして排除するかという知略バトルの趣もあり、予想外に面白かった。前述の通り、百合の愛好者には許容しがたいであろう描写が含まれるため(小生としては全然アリなのだが……)、人を選ぶ作品であることが最大の欠点か。」(背筋崩壊太郎)


『報無豆学園の名探偵部』(古町斧ノ、キキョウ文庫)

「ギャグの雰囲気がシュールで好きです」(架空の妹)


『スイートフェブラリー・ビターマーチ』(著:眠井鴨、しびれびれ文庫)

「コメディ色強めで、キャラクターもいかにもゲーム的な造形なのに、みんな重い。その重さを感じさせない軽い文章で、みんなが抱えているものがチョコレートみたいに少しずつ溶けて流れ出してゆく、そんな話でした。まさにチョコレートだと思います」(匿名)


『バーンアウト・コメットレース』(シャェル*アィア*アキャルキヲ、モョミア・ンシ文庫)

「アシャラティオ銀河へ旅行した先で入手し、旅のお供として読んで、ハマりました」(架空の妹)


『青春なんてクソクソクソクソ愛してる』(NF文庫J)

「ダイダラボッチ隊長が好きです」(紛失物探太郎)


『君の心臓が僕に小説を書かせる』(七藤もず、キキョウ文庫)

「片方が死んだことで出会うことができる、というのは残酷です。主人公がそれによって生かされている、というのもまた残酷です。でも、世界はそんな少しずつの残酷さでできているのだなと思いました。作者にとっては、書くことと生きることが等価値なのだなと感じられました」(匿名)


『平家イケイケ物語』(平熱盛、新劇文庫)

「日本古典文学の名作・平家物語の新解釈。清盛が源氏との決戦の前に、怖気づく兵士の前を鼓舞するための裸踊り(キヨモリ100%)を披露するシーンが胸熱。最初はあまりのバカバカしさに笑ってしまうが、読み進めるうちに笑いが少しずつ感動に変わっていく感覚は、今までになく新鮮な読書体験であった。なおその後、屋島の戦いで二度ネタを披露した清盛の肛門に那須与一の矢が突き刺さるシーンの伏線となっているのもテクニカルである(清盛曰く『鍛えているので平気だった』らしい。何を?)」(背筋崩壊太郎)


『百の疵痕 千の剣戟』(作榊ダイゴ、ゼッタイムテキ文庫)

「両腕ない娘好き」(匿名)


『クソデカ蟹工船』(TKG、真・潮文庫)

「出てくる蟹がデカい! ということで当然船もデカい! 本作の形態は文庫ですが、受注限定で販売されたB0判の迫力が凄まじかった。めちゃくちゃ欲しかったが、29800円(税込)はさすがに手が出ませんでしたね……」(ウミウシ)


『“世界に関する100万の驚異的な記述と我が人生における逃亡見聞録”』(ルイス・フロスト、レーベル名不明)

「片隅にでも掲載されて作者まで届いて欲しい」(名称未設定819)


『ミューズ・マテリアル・イン・マンデー』(祝岩イワシ、PSツー文庫)

「祝岩イワシ先生もそろそろブレイクしてほしいですね。」(名称未設定819)


『legend of JK―失われたぴえん―』(みき、野ばら文庫)

「『ウチらが世界の中心だった』――物語は2010年代を10代として過ごしたかつての少女・まどかの述懐で始まる。タピオカ、ドルチェアンドガッバーナの香水、そしてぴえん。隆盛を極めた『ウチらの文化』が、気付かないうちに、少しずつ他の文化圏に奪われ失われていく。それはJKに敵対する組織インキャの陰謀だった……。愛するものが世界から消え、感情を表現する手段さえ奪われたJKたちが少しずつ生気を失っていく中盤の苦しさ。パパ活、性差別、就職活動、否が応にも外界との軋轢に削られ『最強』を失っていくギャルたちの苦しみは彼女たちの文化を知らない小生にも痛切に響く。だがそれもクライマックスに向けての助走に過ぎないのだ。かつての聖地シブヤを席巻したヤマンバギャル、ハラジュクのガーリー系ギャル、イケブクロの腐女子、文化圏の異なるクラスタが手に手を取り合って《インキャ》の脅威を打ち払うラストには涙が止まらなかった(「どこまで!」「行っても!」「「「渋谷は日本の東京!!!!!」」」)読後の爽やかの余韻の中で、自然にタピオカを飲みたくなる一作である――それが『ウチらの文化』ではないにしても」(背筋崩壊太郎)


【その他・投票作】

『アリスとテレス~自然発生的恋愛のすすめ~』(あじのひもの、オーバーキル文庫)

『僕が保健室で学んだXXXのすべて』(鈴木ウスター、Kiccoman☆BOOKS)

『不可避な彼女』(際限無みつぐ、チュチュチュ文庫)

『上腕二頭筋に告ぐ』(三雲纏繞、新大陸文庫)


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