第22話 そして37年後の試し読みへ
翌日の正午。
秋雨と草壁、それから地味に外で頑張っていた内込は、警察署前で表彰されていた。
警察、軍関係者の他、多くのマスコミが集まり、表彰式には多くの人が参列した。
壇上の上で表彰状を貰った内込は「オ、オレが表彰状を……オレが……」と、オーバーなぐらい喜びに打ち震えていた。
そうして、三人に警察署長がお礼を言ってから防衛大臣が壇上に上がってきた。
厳格な表情で、防衛大臣はおごそかに告げた。
「今回の危機は、君たち勇気ある若者たちがいなければ乗り越えられなかった。特に、あのバルドルには多くの兵と警察官が犠牲になった」
ビルへ突撃してくる前、バルドルは外で軍や警察と戦っていたらしい、というのは、昨日聞いた話しだ。
「浮雲秋雨!」
「はい!」
秋雨が背筋を伸ばすと、大臣は滔々と続けた。
「軍や警察の手練れを寄せ付けなかったバルドルを打ち倒した君の功績は大きい。そして皆に重大発表がある」
壇上からマスコミに向き直る。
「軍と警察の垣根を超えたアポリア対策チームは独立した第三武装勢力とすることが正式に閣議決定した。その名は
マスコミが騒ぎ、歓声を上げる。
「え? 高校ってこと?」
「よかったね秋雨。言っておくけど、ボクはそこに進学するつもりだよ」
「で、でも俺は父さんの会社の手伝いが……」
秋雨が言い淀むと、関係者席から父親が手を振ってきた。
「秋雨ぇ!」
「父さん?」
「父さんなぁ、会社畳んで草壁グループで働くことにしたから! 行ってこーい!」
「えぇえええ!?」
秋雨は色々言いたかった。
自分のために会社を畳むのか、本当にそれでいいのか。
だけど、手を振る父親は幸せそうで、無理をしている感じはしない。
秋雨が唖然としていると、隣の草壁がヒジでわき腹を小突いてきた。
「いつまで夢から逃げる気だい? ヒーロー」
小気味良い笑顔に、秋雨はもう何も言えなかった。いや、言いたかった。
満面の笑みで、秋雨は心の底から世界に向けて万感の想いを叫んだ。
「みんな! 俺! シーカーになってみんなを守るヒーローになります!」
彼は浮雲秋雨14歳。
のちに世界最強のシーカーと呼ばれる小さなヒーローである。
その様子を温かい目で見守っていた防衛大臣は、檀上から降りるとふと口を開いた。
「……そういえば、おかしくないかね?」
「何がですか大臣?」
秘書の問いかけに、防衛大臣は首をひねった。
「いや、何故、ネームドは【彼】の周りにばかり集まるんだ?」
END
37年後を描いた【僕らは英雄になれるのだろうか】は電撃文庫より発売中!
英雄に憧れた全ての少年に贈る、師との絆が織り成す学園バトル!
人類を護る盾であり、特異な能力の使用を国家から許可されているシーカー。
その養成学校への入学を懸けて、草薙大和は幼なじみの天才少女、御雷蕾愛との入学試験決勝戦に臨んでいた。しかし結果は敗北。試験は不合格となってしまう。
そんな大和の前に、かつて大和の命を救ってくれたシーカーの息子、浮雲真白が現れる。傷心の大和に、大事なのは才能でも努力でもなく、熱意と環境であり、やる気だけ持って学園に来ないかと誘ってくれたのだった。念願叶って入学を果たした大和だが、真白のクラスは変人ばかり集められ、大和を入学させたのにも、何か目的があるのではと疑われ──。
ニワトリが飛べないのは才能でも努力でもなく環境のせいだ! 無能な少年と師匠の出会いが、一人の英雄を誕生させる──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます