第6話 顔認証エラー

ある日、会社員の坂本はスマートロック付きの自宅ドアを開けようとした。

最新の顔認証システムは、彼の顔を見るとロックを解除する——はずだった。


だが今日は、エラーが表示された。


「登録されていない顔です」


「は?毎日使ってるのに」


画面には自分の顔が映っている。

文句を言いながら、予備の手動キーで解錠して中へ入った。


家に入ると、どこか妙な空気。

リビングのテレビがついている。…朝、消したはずなのに。


「おかしいな……」


 


その時、背後でドアが自動的にガチャンと閉まった。

同時に、インターホンが鳴る。


ディスプレイを確認すると、そこには自分と全く同じ顔の男が映っていた。


 


「顔認証、解除されました。ようこそ、おかえりなさい。」


画面越しに、“もう一人の坂本”がにやりと笑った。


家の中の照明がすべて落ち、ロック音が全方向から響く。

スマホも、ネットも、電源も、一瞬で遮断された。


 


その日から、誰も本物の坂本を見ていない。

だが、彼のSNSは毎日更新されている。


 


――笑顔の写真つきで。

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