第3話 鏡の中の私
夜遅く、小林美咲は一日の終わりに鏡を見ながら顔を洗っていた。
顔を洗い終わり、無意識に鏡の中の自分を見つめる。その時、美咲はふと、鏡の中の自分が微笑んでいることに気づいた。
「……?」
不安な気持ちが胸をよぎる。
美咲は、自分の顔をじっと見つめた。確かに、鏡の中の自分は微笑んでいた。しかし、自分は微笑んでいない。
無意識に顔をゆがめ、再度鏡を見たが、そこに映る自分は今も笑い続けていた。
その笑顔は、どこか歪んで、異常に感じられる。
「あれ……?何で?」
美咲は鏡に近づき、目を凝らす。
その時、鏡の中の自分が、ゆっくりと話し始めた。
「あなた、私を見ないで。」
美咲の体が硬直した。
鏡の中の自分は、さらに笑いながら、何度も繰り返す。
「私を見ないで。私を見ないで。」
その言葉が、まるで耳の奥に直接響くように感じた。美咲は後ずさりをしようとしたが、足が動かない。
次の瞬間、鏡の中の自分が手を伸ばしてきた。
その手が、鏡を越えて、美咲の肩に触れた。
美咲は恐怖に凍りつき、そのまま目を閉じた。
目を開けると、鏡の中には、もう自分の姿はなかった。
代わりに、笑いながら手を振る見知らぬ顔が映っていた。
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