眠れぬ夜の、すぐそばにいる

窪田 郷音

第1話 アレクサ、誰と話してるの?

春の深夜。独り暮らしの会社員・絵里は、いつものようにアレクサに話しかけた。


「アレクサ、音楽かけて」


しかしアレクサは応えなかった。

おかしいと思って近づくと、デバイスが微かに点滅していた。

よく見ると、「通話中」という表示が出ていた。


「……え?」


「アレクサ、誰と通話してるの?」


「通話中です。終了しますか?」


通話履歴を確認しても、誰にも発信していない。

番号も出ない。だが、再び声がした。


「アレクサ、聞こえてるよ。つぎの声が最後だね」


絵里は慌ててスマホを取りに行った。

だが、戻ったとき、アレクサが最後に言った。


「“彼女、今、後ろに立ってるって”」


その瞬間、絵里の肩を、誰かの指がつついた。

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