第14話



「見習い・・・料理人だとっ!?なんだ、シラネ。おまえ他にパーティを組んでくれるやつがいないから、見習い料理人なんかとパーティを組んだのか。」


ユージンはそう言って鼻で笑った。

シラネ様がオレなんかとパーティを組んでいるということに対して優越感を持ったらしい。

っていうか、シラネ様とパーティ組んだ覚えはないんだけどね。でも、この場ではシラネ様にあわせることにしよう。

オレ、ちょっとユージン苦手だし。

シラネ様にちょっかいかけるのに悪意を感じるし。


「ええ。そうよ。でも、リューニャはあなたより強いわ。」


「そうじゃなぁ。リューニャはお主より全然強いのじゃ。」


なぜかトリスも会話に混ざってきた。

そうして、二人してオレが強いとか言い出す。

オレ、強くなんてないんだけど・・・。

っていうか、魔物を倒したこともないし、人と戦ったこともないのだ。

なんで二人ともそんなはったりを言うのだろうか。そんなことを言ってユージンに勝負をしかけられたらどうするんだよ。まったく。


「オレより・・・見習い料理人が強いだとっ!!オレは勇者だ!オレより強い人間なんているはずがないっ!」


ユージンはギラついた眼でオレを睨んできた。オレの方が強いと聞いて殺気を放ってくる。

ってか、ユージンってば勇者だったんだね。

勇者なのに余裕がないだなんて。この肩書きっていったいなんなんだろう。

性格は特に考慮されず、特定のスキルが高ければ勇者になれたりするのだろうか。シラネ様もローゼリアも聖女には思えないし。


「なら、リューニャと戦ってみる?あの色つき固化とトリスもリューニャは一撃で気絶させたわよ。」


シラネ様がそう挑発をした。

ユージンはシラネ様の安い挑発をうけ鼻で笑った。


「ふんっ。オレが見習い料理人なんかに負けると本気で思ってるのか?シラネよ、オレに捨てられたのが悔しいんだろう。それなら見栄を張らずにそう言えばいいんだ。そうしたら、パーティに再び入れることも考えてやろうじゃないか。」


「見栄じゃないわ。本当のことよ。」


「まあ、いい。そこまで言うのならば勝負をしようじゃないか。負けて痛い目を見るのはそっちだからな。」


「いいわよ。受けて立つわ。」


そういうことになった。

って、オレの意見は?

ユージンとシラネ様との間で話が進んでしまい、当のオレは口を挟む隙も無い。


「勝負は一本勝負。どちらかが戦意喪失するまででどうだ?」


「それでいいわよ。後悔しないようにね。」


「それはこっちの台詞だ。間違って致命傷を負ってもしらないぞ。なんたって見習い料理人なんだろう?」


「ええ。そうね。あまり油断しない方がよろしくってよ。」


「ふんっ。闘技場の使用許可を取ってくる。逃げずに待っていろ。」


ユージンはそう言うとギルドの受付の方にツカツカと歩いて行ってしまった。


「シラネ様。オレ、見習い料理人なんですってば。魔物も倒せないくらいなんですよ。知能のある人間相手じゃオレ何もできずに負けます。」


情けなくも弱いオレは、シラネ様にそう陳情する。戦わなくてすむならその方がいいし。

オレは血を見るのも苦手だし。


「リューニャ、男にはやらなければならないときがあるのよ。」


「いや、今じゃないと思うんだけど・・・。」


「私があの男に侮辱されたのよ!惚れた女のために敵くら取りなさいっ!」


シラネ様は口調を強める。

っていうか、オレいつの間にシラネ様に惚れたことになってるんだ?

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