7月10日


 昼休み。

 生まれて初めてのカノジョとお昼ご飯を食べている。

 屋上で、二人で。



「天気良いね」


「そうね、生きているって感じがするわ」


「昨日、学校が終わったあと何してたの?」


「……あなたは、私のストーカーか何かかしら」


「いや、彼氏のつもりなんだけど」


「昨日は、ご飯を食べた後テレビを観ていたわ」


「なんの番組?」


「爆笑ドレッドヘアバトル」


「……なにそれ?」


「二組のお笑いコンビが漫才を披露して、面白くなかった方がドレッドヘアにされてしまうバラエティよ」


「……最近テレビでドレッドヘアのお笑い芸人が増えたと思ってたけど、それか」


「おなかがよじれるほど笑ったわ」


「……えっ?」


「えっ」


「キミって、笑うの?」


「この世に、笑わない人間なんていないと思うのだけど」


「いると思ってたんだけど、目の前に」


「失礼ね、私だって面白いことがあったら笑うし、悲しければ泣くわよ」


「確かに、ホラー映画を観て号泣してたね」


「ああ、チャイムが鳴ってしまったわね、そろそろ教室に戻らないと」


「……やばい、まだ半分以上お弁当残ってるのに、急いで食べなきゃ――、グッ……!?」


「――だ、大丈夫っ? 急にかきこむからよ……」


「……だ、だいじょう――、ゲフッ」


 すぽーんっ


「……く、口からタコさんウインナーを吹き出したわっ!?」


「……苦し――」


「――アハッ……」


「……えっ?」


「あははっ……、あはははははっ! く、口から! タコさんウインナーって! アハハハハハッ!」


「……」


「……ハァハァ、ご、ゴメンナサイ……、あまりにも、面白くて……」


「……いや、キミってさ」


「……?」


「笑った顔も、かわいいなって」


「――!?」


「もっと、笑えばいいのに」


「……」


「……」


「ねぇ」


「……何?」


「よ、よく聞こえなかったから、もう一度言って欲しいわ……」


「えっ?」


「……」


「……」


「……」



「今日、天気良いね、って」


「さっきと、違うじゃない」


「いやだから、聞こえてるじゃん」


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