第2話『おつかれさまあ』


連載戯曲:サクラ・ウメ大戦・2『おつかれさまあ』



  大橋むつお





時 ある日ある時


所 桜梅公園


人物 


(やさぐれ白梅隊)   (はみだし八重桜隊)


ゆき(園城寺ゆき)    さくら(長船さくら)  (ITVスタッフ)


咲江           百江           リポーター


ルミ           純子           カメラ


春奈           ねね           音声


千恵           やや


その他いっぱいいれば なお良し 






リポーター: おつかれさまあ。


ゆき: なんだ、そんなところから撮っていたんですか?


リポーター: いい絵がとれたわよ。


さくら: すみません、本当は、二人とも千鳥(前に進みながらザコを打ち倒すこと)の末に、とりまきをバックに太刀打ちってことになっていたんですけど……




   カメラが舞台に上がると、そろりそろりと、双方の生き残り数名が、ある者は、はにかみ、ある者はニコニコとカメラを意識して舞台に上がってくる




リポーター: 大丈夫、クライマックスはローアングルのバストアップで撮ったから、大丈夫よ。


咲江: ローアングルって、下から撮ること?


ルミ: パンツ写っちゃうんじゃない。


ゆき: 大丈夫スパッツ穿いてっから。


リポーター: 大丈夫よ、バストアップで撮ってから。


百江: さくらってペチャパイだからね。


純子: 下から撮ったら胸も大きく写るんじゃない?


さくら: うっさいよ、あんたたち!


リポーター: バストアップって、胸から上しか撮ってないってこと、ほんとはカメラ二台使って交互にカットバックでいきたかったんだけどね。編集で、なんとかするわ。


ゆき: ちょっと後からギューギュー寄ってくるんじゃないわよ!


さくら: 今ごろになって、出てくるんだもんなあ!


ねね: だって、あたしたちも写りたいしィ。


やや: そうだよ二人だけ目立っちゃって。


リポーター: 今、カメラ回ってないよ、ね、沢田さん。


カメラ: はい、バッテリーもったいないですから。


春奈: ええ?! じゃ、どうしてカメラ構えてんのよ。


リポーター: いつシャッターチャンスがきても撮れるように構えてるのよ、プロの常識。


春奈: ええ、せっかくファンデやり直したのに。


千恵: あたしずっとカメラ目線でいたんだよ。


百江: 放送局のケチ!


音声: 音声は生きてるんだけど……


百江: え! 音声さん美人よ! ねえ!


純子: ねえ、マイクの棒持つ手なんかスラッとしちゃって。


咲江: ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ……


ルミ: 今頃発声練習してどうすんのよ。


ゆき: あんたたちねえ! あ、入ってんだ。


音声: いま切った。


さくら: ほんとに、あんたたち、さくらも満足にできないのね。


春奈: だって、あなたたち桜女子と違うしィ


さくら: その他多勢、エキストラって意味だよ!


一同: だって……!


やや: ねえ……


ねね: わけわかんないうちに連れてこられて百均の刀渡されて。


千恵: こっちも似たようなものよ、


ゆき: ちゃんと説明したろ。


さくら: 聞いてないんだろ。


百江: やっぱマニュアルとかさ……


リポーター: これはね、老人ホームに入ってる婆ちゃんたちが、取材に行ったらね。旧制女学校のころ、白梅と、八重桜の二校でよく果し合いしたって、なつかしい話になってね。それで急きょ後輩のあなた達に頼んで、模擬果しあいをしてもらったってわけよ。


ルミ: そういや、ゆきが老人ホームがどうとかって……


春奈: ああ、食堂でラーメンすすってた時。


純子: そう言や、さくらも、昼休みに、おにぎりかぶりつきながら話してた。


さくら: 飯時でなきゃ、みんあ集まらないだろうが!


ゆき: 先生達の気持ちがわかるよ……


咲江: だって……


リポーター: わかった。見せ場だけ、もっかい撮ろう!





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