第六幕 観察

1-転移の帰還

転移白い閃光のような光に、魔力の渦が足元から暴風のように吹き荒れた。目をつぶり、身体を強張らせ身構える。


咄嗟の反応はに意味があったのかはわからないが。

抱き止められた腕の感触を感じて、風が落ち着いたのが分かり目を開けた。


雪。…はいつもの事。しかし、魔木の周辺にあった積もり方とは違う。

(雪かきした後に積もったような。)


顔を上げると、どこかの塔の上?城が眺められる位置、医療塔が見える。

見慣れた医療塔は、角度が変わってもわかった。


今、『極北の城』その中心の建物に立っている。

「着いた?」


転移の結果、帰ってきたと飲み込めた。立とうと思ったら…地に足ついて居たはずが、セリは踵から沈むような傾きを覚える。

「わっ?」身体が斜めになったと思った。


それを防ぐように狼の背に座るような形になる。いや、そもそも足元は傾いておらず。


「目眩だったみたい」

セリの両手を支えてくれた目の前のロードに告げた。


支えられていても、まだ地面が安定していないみたいで不安だ。周りのメンバーは平気そうだが?


少し先でキースとグスタフが、専門的な言葉を交えて話している。その間をシュルトが「怪我をしていない?体調は?」


と割って入っている。双方が馴れているのが凄い。


その打ち合わせが終わるまで待つ。すぐ終わるだろうと待機の様子なので、そのままの体勢でいる。


セリが足元を見る。平な床は固いが、揺れている気がするのでしばらくこのままが良いかもと不調があった。



そのうち、キィっと窓が扉のように開いた。

「無事か?」


議長アンドレアスと衛生兵が、そこから出てきた。


会議が行われる塔の、上層。テラスのようになっているらしところに、転移で6人が現れたのだ。


シュルトが、セリの様子に気づき近づいて言った。

「セリ、あー。ロード抱えて入って。」


“当たり前だろ?”という態度でセリを抱え、建物の中に入った。狼も後からついて来る。

打ち合わせ済みだったらしくすんなり、迎え入れられた。


温かい部屋の中でホッとする。


議長の執務室を通り、奥の大きな部屋のソファ。

柔らかな感触の筈だが、ロードの上だったので沈み込んだのだけ伝わってきた。


面識のあるナナン医師に、体調を聞かれたので、

「ぐらぐらする。」とだけ答えた。


「楽な姿勢に。」


ロードに横抱きされる格好で身体を預けた。


先ほどから続く、上の人のお話と研究者の声を聞きながら目を閉じる。

狼が寄り添い、調子が悪いのはセリだけのようだった、


「魔力酔いの症状だと思うんだケド。

ワタシと違って、魔力を使ってから転移したでショウ?」


「その分影響を受けたのね。」

「慣れて居ないと酔いやすいのは、船と同じヨ」


「急激に回復させりより、大人しく自然と回復させるのが良いです。」

「悪くなるようなら、キースに診てもらいまショ?」


シュルトとナナン医師の会話をボーッとした頭で聞いた。

渡された果実水の酸味と炭酸で少しスッキリしたので、言われた通り頷いたセリは、安心して微睡んだのだった。

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