10-帰ってきた

極北の城に戻った途端皆それぞれ、散っていったが…

セリはロードと部屋に戻った。風呂に入り、寝る。


他は慌ただしく動く。部屋にカナンのシュルトもいないが、セリのやる事はない。疲れた体は、周りの状況を考慮せずにすんなり眠りを求めた。


ロードはもれなく、セリの側に居る。いや、少し離れた時もあったがセリが気づかないくらいに僅かな間だ。


向かったのは部屋のドアの前。室内でも抵抗なく氷を形成した。もう一枚の扉のように重なる。


そして愛しい番いと一緒に寝る栄誉に、身を横たえたのだった。全然眠くないが、問題はない。



キースは慌ただしく人員を動いていた。指示を出して、自身は議長への面会。鬱陶しい輩を「後にして?」とやり過ごし、直行で面会に漕ぎつけた。


「結果が出た。」

「そんなに悪かったか?」


キースの様子を咎めることなく、優先する。共有された認識と今回の目的にひとつを思えば当たり前の事だった。

書類を説明しながら見せ、その内容を飲み込むように間が置かれ…


「もうすでに始まっているかもしれん」


そのまま、話合いが続いた。


そんな動きと別のところで、夫人は治療棟の個室で安静にしている。やっと落ち着いてもらえるだろう。そことは別に、ソワソワしている男が2人部屋で待たされていた。

クエンとオッサンだ。尋問があるため、護衛の3人組に連れてこられた。


キース様には他の護衛がついて行っている。そのまま3人は休憩に入る。


「名前は?」

「タロー。」オッサン名前が気に入っていないのでセリにオッサン呼びさせていた。童顔なのも気にしている。


それを思い出し、クエンも名前を言った。


尋問というより、証明書づくりの質問みたいだと思った。

実質、この城にいるための仮の身分証づくりの質問が多くあったのだった。


他の者も帰ってそうそう、働く者もいる。こちらはキースの指示に従っていた。


補給、発注をするシュルトとソラスに加えコックの男を引き連れ

料理場へ。


コックの男、セナは顔色が悪い。獣人の多さに気が引けているのだ。元々気が弱く、ガタイの良い獣人の圧にビビっている。


最初、セリに間違って矢を放ったのがコックの男だった。そのせいでロードに睨まれ、肝まで冷えたのもだ。


その反動か、しばらくは強面の犬獣人兵士を前にしても腰が引けなくなった。


ザイルにビビらなかったのは、ロードでずいぶん感覚が麻痺したいたのだろう。顔が怖いが、穏やかな気性だし。熊獣人も突然キレるような性格ではないと察知した。


そんな緊張も音、匂い。料理ができる環境を前にして止まる。

思い描く、料理できる場所だ!その感動のまま…


「下働きにでも使ってください!」

自ら売り込んでいた。働く職場が決まった。


シュルトの意図は、『セリの出身国の料理について作れないか』と、話をつけにきたら目の前でコック志願した。まあいっか。コックは、料理人に任せよう。ここの料理人は皆兵士だし、問題ない気がした。


ひと仕事終われば、休みに入るところ。アレクセイのもとに竜人の護衛にあたっていた者から連絡が入った。


交代をした直後の護衛からの連絡に、問題が起きたらしいと駆けつけた。


部屋の前で騒いでいた。扉が解体された直後、その部屋に入り込むところで静止する、必要もなかった。


「なんだこれは!」

部屋へ阻む、透明の壁は氷だ。外から持ってきたわけではない。それなら、魔法で作られたのだろう。ピッタリ、2枚目の扉になっていた。


更にうるさい。

「壊せ!我が城でこんなものを作るなど!」


誰の城か。

その騒いでいる男が、客室に踏み込む権利などもない。ここは客人の部屋である。そして護衛として見過ごせなかった。

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