第五幕 集結

1-探索

誰もいない?

セリは見知った『北の砦』を眺めた。


見張りも居なければ、動いている気配もない。生活していた痕跡はなく、ただ寒々とした砦。


すでに放棄されたような様子に、セリは呆然とした。


ぎゅっと、ロードと繋がれていた手が握られた事でで思考の渦から脱した。

外観を見ているだけでは、来た甲斐がない。


近づくも、板で封鎖されているらしい場所。

「中に入って見るか?」


キースに聞くグスタフの2人には、だいたい砦内の地図を伝えてある。


グスタフは、山の中に当たる部分ドワーフが掘ったと思われる坑道が気になるらしい。建物の中2階にあたるため、今回は詳しい調査は難しいだろう。


誰かいれば交渉して見れたかもしれないが、封鎖されたこの状況ではたどり着くのが難しいかもしれない。


「食糧の備蓄具合で戻ってくるとか、わかるかな?」


団体での移動であれば、偽装で誰もいないと見せているか?誰か残しそうだが。

砦に近づく者を監視しているものだが、反応はない。


戦力になる者はいないのだろう。護衛は視線を、危険を感じてはいない様子だ。


「あっちに食堂の裏口がある」

セリが左側、を指す。よく出入りしていた場所だ。


板を壊して入ったが、少し埃っぽい。

「結構前から誰も入っていないなあ、こりゃ。」


キッチンの使っていない様子、何も無いと思わせる空間。

ここで、隊員が酒に食事に賑やかだった光景を思い出した。


しかし、誰もいないのか?


ひとつは帰った可能性。最前線を守るという建前の下、送り込まれた部隊は、極寒の地で厳しい日々だった。


環境もだが、それほど良い装備が揃っていない。元々赴いた栄誉職としての遠征であり、その実情は貴族をトップに据えられだらだと過ごしていたのだ。


その滞在も命の危機があれば、帰り報告をすればおしまい。


付き合わされた下っ端は、お貴族様の命令に従い雪降る森に送り込まれた。


撤退したとしたら。情報は得られないか。

セリの孤児院、隠れ教会らしい場所から連れ出され、来たものの

盛大に迷った。


その後は、狩りに従事した。


地図。軍事機密にもなりやすいそれを見れる機会など

放棄した砦にあると思えない。


「我々が匿われていた馬小屋は、近いのか?」


護衛然としていたアレクセイからの言葉

(忘れてた。)


数人が住むなら、そこのが便利だ。

食堂から、山小屋の機能もある馬小屋へ。




守護


出入り


息遣いさえ凍ってしまっている。

なんなら、塞いである。


「誰もいない、かな?」



匿われた場所は?


記憶のまま、小屋になっている。

塞いである様子はないが


山小屋として作られたそこに


入る




牽制だったようだが、悲鳴が上がった。

こちら側ではない。


その確認にセリは、ロードの腕の中に確保されていた。そのまま矢が放たれた方角を見たら、知ったコック姿が怯えていた。


「坊主?!生きてたかあ!」


違う方角で上がった声を見れば、カナンに捕まったオジサンがいた。


「元気?」と聞いものの、包帯が巻かれて怪我をしていそうだ。


青白い顔なのは緊張からか?

(いや、ここ寒い。)


熱源を探すが、近くに無さそうだった。

「誰か居た〜?」


3人の護衛と


「おう。たくさん連れてきたなあ。」

「うん。助けられて獣人の国に方にいってた。」


「そりゃ、結構遠くまで行っちまったなあ」


撫でたかった手は、空中で止まる。

後ろのロードに向いた瞳に、口元は引き攣った。


「誰?」

「ロード。」


欲しい情報は名前ではない。ちょっと間の空いた時に声が届いた。女性?


「夫人!休んでろよっ」


顔色の悪いように見えるが、知っている人だった。

ロードから降り、丁寧に礼をする。


「お久しぶりです」

セリにマナーを教しえてくれた先生である。

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