21-来訪

のんびりしていて昼になる頃、グスタフが部屋に来た。

「持ってくれ」


何やら色々持っている。資料に、植物や鉱石の入った標本箱。


シュルトとカナンも参加して、運び込まれたのは地図となんだろうか?

古い紙の匂いがする。


興味深げに見ていたら、「昼食後にしよう。」といったん縁に置かれた。


「使ってくれ」

シュルトに渡していたのは、以前食べたことがある“洞窟きのこ”だ。

ドワーフの人達のところに行ったのだろう。地下訓練の奥で栽培していた、きのこを分けてくれたビブルは元気だろうか。


スープに焼いたキノコが加えられ皆んなで昼食を摂る。

熱いスープをロードがさりげなく温度を下げ、セリの口に入った。


「はふっ」その温度は、おいしさはそのままだった。

子供の舌にアツアツのスープは食べにくかもしれないが、今日の野菜は初めてだ。挑戦させてみたかったのもある。


セリがロードから食べさせられるのに慣れているのが良いのか微妙な気持ちになるカナンとシュルトだ。

たまにロードの方へ食べさせるのも、見慣れた物だ。


グスタフは元から気にしてはおらず、おかわりを所望してスープは残り少ない状態になった。


「これをね、器に入れてパンを被せて絵焼くときのこみたいな形になるのヨ」


柔らかいパンがシチューの蒸気に当てられ、ふんわり丸まった様。家でシチューの残りで作る家庭もある。シュルトの家では、パイで作る事もあったそれは、シチューをそのまま出すより多い料理だった。


そんな美味しい話を聞き、食後のお茶がボールで出される。


ゆるりとマイペースにグスタフが話始めた。


「この資料なんだが、ドワーフ達に古い鉱山を覚えていないか話を聞き、場所も確認できた。」


『北の砦』と呼んでいたセリが居た場所は、元がドワーフが採掘をしていた鉱山の入り口付近に建てられた、比較的新しいのではないかと思われる。


新しいといっても、100年単位はあると思うが。


『採掘が終われば、ただの穴だあ!』と言うほどドワーフには興味がないらしい。


「セリが言っていた柱に柄に、見たことがあると答えもあった。」

「あったんだ。」


これで、ドワーフの記憶も使えるがそれには地図での検討も必要だろうと今日はそれをしていたらしい。


「地図はわかるけど、他は何?」

セリの関心は、箱の中にある。


割ったと思うわれる石には、キラッと光る部分。

魔力の感じが妙にする鉱物。植物は…これ植物?


硬いタイルのような植物は、柔らかさより塊を思わせた。


「ああ。触って問題ない。」


シュルトに説明するために地図を広げている。そっちにカナンも参加するようだ。そういえば、情報部だった。


ポロっと情報を出すつもりなのかもしれない。

知られる方については、特に規制のないものらしい。セリに聞かせてられる時点でお察しである。


ロードに抱えられながら、箱を一つづつ除き、手に取る。


「土属性だな。」


ロードの言う通りなのだろう。魔力は感じるが、セリには属性まで特定できない。


「どこでわかるの?」


色と聞いたことはあるが、見分け方は経験がものをいうらしい。


「武器屋で見たことがある。ハンマーについてたりする。」


セリが想像したのは、ウォーハンマーと呼ばれていた大きなものだが。

ロードが入っているのは、採掘用の片手で小さいもの。


しかし、それを持てるのは熟練度の高い鉱夫だ。

魔力が乱れる場所で慎重に使える者。


なので、セリの攻撃用の背丈ほどあるハンマーのが一般的と言えるかもしれない。


そのセリが両手で持たなければならないサイズは、確実に高価だが。


金銭感覚については、セリがズレていってしまう危険性を感じ取るのは、シュルトの役目だった。


ロードは構えず、鉱石に魔力を入れて見せたりとセリの興味を引いて内心喜んでいるのだった。




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