第四十五話 中盤戦

「まあ、軽ーく行ってくるわ」


カナンが振り向くも

ロードの上に乗ったセリが手を振っただけだった。


ロードは、セリが怪我をしていないかの確認をし

今ではセリの首元に顔を埋めている。


堪能していた。


顔を上げる気もないのだろう。


初戦の邪魔もせず、持った方だ。

と評価し、カナンは2人から離れていった。


相手方も準備万端に、柄の付いた斧を引きずるように持ってきた。


ハルバートにしては、小さいが

その分小回りが効くように選んだ武器なのだろう。

「小細工などいらん。この獲物だけで相手を屠ってみせる」


と言ってそうだ。




(普段、斧をぶん投げる腕力と命中率がある男には

軽い得物な分スピードに注意だな。)


カナンの得物も一種類だが、威力はない。


両方魔法は使わずの武器での勝負だが、

身体強化は勿論、魔法での補助は認められている。


属性は風。その初級ほどのレベルでは

武器で勝敗が分かれると見越されている。


賭けもこの中盤戦は、どっこいどっこいで盛り上がる。

騎士の戦いながら、力勝負の見応えある試合の予感に観客は沸き立っていた。


酒付きで。


「まあそんなもん。

せいぜい盛り上げるかね?」


「ふん。そのチャラついた精神を叩き直してくれる!」



「まあ。これが尽きるまで付き合ってよ」


ズラっとナイフを仕込んでいるカナンの姿が見えた。


「ロード、見なくていいの?」

「問題ない。」


セリは何が問題ないのかわからないが、

実際ロードは耳から戦況を予想できた。


視線はセリにやるので忙しい。


キンキンとナイフを防いでいる音と

デカイ声で気合を叫ぶ男の声


盛り上がるんだろうが、多分カナンが勝つ。

投げナイフに対して、斧での力技のが有利に見えるが


カナンの風魔法の帯びたナイフの変化は捉えづらく、

その一撃の蓄積を狙った戦略。


止めまでたどり着けるのか?

本数の制限が問題になりそうだが、

(そこは抜け目ない性格で勝ちをもぎ取るだろう。)


今ロードに必要なのは、

「セリの補給に集中してる」


意味はわかっていないが、集中するらしいので

邪魔せず終わってから声をかける事にした。


模擬戦の行われている地下訓練場に選手控えとばかりの

特等席で、迫力の攻防を目で追っていた。


フェイント

ナイフがなく風魔法のみの攻撃も混ざり


そのナイフは器用に、斬撃の軌道を逸らしているものの

なくなったら、防ぎようがない


カナンは隠しナイフを持っているだろうか?

手に汗握る状況の膠着が変わる瞬間が近い。



一方的に降り注ぐ、そのナイフの持ち数が尽きようとしていたのだった。





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