第十五話 夜のひと時

セリは、砦に居た頃の話をしたのが疲れたのか、早々に寝ることになった。


セリの話は

淡々としていたが


12歳の子どもの生活は過酷だ。


フォローや手助けもあったが、

独りでの行動


貴族に目をつけられないよう潜んでいる生活は

辛い生活だっただろう


ここは雪に閉ざされた環境だ


セリの話し方に悲壮が感じられなかったのが、救いだが。


納得がいったという部分もあった。

「病棟での診察で、衰弱とまではいかなかったケド

そんな生活だったのネ。」


「あの魔法の習熟度と動き

訓練じゃなくて、生存のために磨かれた…か。」


身体能力

暗殺者として育てられた疑惑を持っていた。

そりゃあ命かかってりゃ、成長するしかないか。


暗殺の技にしては、爪が甘く

鍛えられたと思われる俊敏さと力は、生き抜くためのもだった。


その過程を思うと同情する

命の危険と隣り合わせだ。


なんか、なんで本人があんだけ飄々としてるのか疑問に思って来た。



グスタフ


キースも来れたら?と来そうな気配



酒を飲みながら、夕食がわりにする。

子どものセリがいないなら、もう呑むだけ。


そこに、菜を出すシュルトがいれば、立派な飲み会だった。



大人しく聞いてたな?


「震えてたからな。」


この男が言うなら、セリのことだ。

「なるべく、自分の感情を入れないように喋ったんだろう。」


チッと舌打ちしそうな機嫌の悪さは、

過去では、己の番を助けられない。

そしてセリ自身もそれは望んでいない事。


過去は、通り過ぎたもの。記憶には存在しても、今これからには実体のない幻。


運命神の教義だろう。


聞いたロードの方は、まだ消化しきれない気持ちを酒そ煽る事でやり切る。


セリに与えたいのは、過去に同情することではない。


「砦の場所、わかんのか?」


情報を持つ2人に聞く。


「山脈や山が多い、もっと北とはわかるケド。」


「この広い森の中じゃないだけマシなのか?」



北でも西寄り、山のある一帯


そこに、ドワーフの作業場があった可能性が出れば。


「資料を当たれば見つけられるだろう。」

グスタフが断定した。


ドワーフに関わった洞窟、採掘が行われれば

そこで出た鉱石などの流通が始まる。


記録にないのは、まだ掘っていない場所

と言われるほどその辺はマメなのは、種族柄か?


「声が大きかったか?」


セリが起きて来た。カナンの声に首を振り否定の意を示す。

ボーっと眠そうな目で

のそのそな動きは、訓練場での動きが同一人物か?と思う。


遥かに違う、子供っぽさでロードの膝へと入り込んだ。

記憶に引っ張られ、少し寂しい気持ちだったから。

ここが安全と覚えた。


その動作に、表情は動いていないロードの顔が、パァア!と輝いた錯覚が見える。


セリに果実水を渡して、しばらくした後。


キースがやってきた。

「ちょっと面倒な目にあうよ」


占い師みたいだなとセリは思った。

それが、良いことではなく波乱の方だと察せられたのだった。

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