第五話 相談

「やっと来てくれた。」


ぎゅうと抱きつかれ、うさ耳が視界に迫る。



後ろにいるロードが不服そうだが

同性の小さい子相手には大人気ないぞ?


「男って、面倒よね」


2人で歩き出しながら

ぽそりと聞こえているのわかっていて言う。可愛い兎の獣人、リリンが辛辣だ。

(小さい女の子の口からは聞きたくない台詞かも)

遊びの場から離れ、2人で座った。


ゆったりしながら、少し遠くではしゃいで遊ぶ子達を眺めた。


セリとリリンのいつもの場所だった。

子供らしさはないが、気分転換にはなっている。


特にリリンは親戚のお兄さんという、面識しかない相手と交流はなく

気持ちが塞いでいる。闘病中でもどかしいのもあるのだろう。


丁度遊ぶのを控えるよう言われてぼーっとしていた時もセリは、

話を聞いて側にいたら懐かれたのが経緯だ。


セリの友人の1人と言える。


「そろそろ、ガツンと言った方が良いのかしら?」


親戚のお兄さんへの物言いが溜まっていた。

リリンをナデナデと頭を撫でて慰める。


寂しさと、もどかしさでぐちゃぐちゃな感情に寄り添う。


本人も八つ当たりになるとわかっている故に

息抜きが重要。


良い子でいないといけないし、楽しくもない治療を受ける必要があって、文句は飲み込む。


それが当然で、苛立つだけで“らしくない”?と言われ問題視される。

煩わしくもなる。


ここが共同体で他の子との比較も入ってしまうからか?

子供もそれなりに大変だから。

「猫を被るのも大変だよね」


「猫?」

(あ、獣人の社会では、使わないか。)

本当の猫を頭からかぶっている想像をされているだろうか?


獣の字を使った比喩が使われていないと聞いたのを思い出して補足した。

「仮面を被るとか、演じるって意味。」


「子供っぽく振る舞うとか?」

セリを見る。

自覚があったので視線を避けた。


12歳とバラしてからも、子供っぽくを意識していた。

構ってもらうのも楽しいが、いつも以上に大人しくしていると自覚がある。


2人でため息をつく。悩みは同じだった。


“だって、嫌われたら?”

2人の根底は一緒だ。


今の環境を壊したくない、良い子でいれば大丈夫?

それにもどかしく感じている。


言いたい事を言ってしまえばスッキリはする。後は知らないけど。

言ったことはとる戻せない、


もう、猫でも仮面でも剥がしても良いものか。


“面倒なガキ”

になってしまうのではと悩む。


ロードが獅子の獣人の男の子を追い出しにかかっているのを見て

(子供だなあ)とその様子が、悪いとは思わなかった。


訳知りにリリンがため息混じりに言う

「もう少し、気持ちが楽にいたいものね。」

「そうだね。」


セリは切っ掛けを探しているのかもしれない。

遠慮のない状態ではいられないけど、わがままを言うタイミングを。


目に写る動きが騒がしくなったのでゆっくり腰を上げる。

(あれは止めるかな)

リリンに断って、ロード達の方へ歩いて行ったのだった。

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