第25話 体験

「身体が鈍ってる」


セリは鑑定を受けてから、少し体調を崩した。

ロードに部屋から出るのを禁止された。


(微熱というものでもああなるとは)

セリにしてみれば、あの程度で?と言いたいところだが。


「人は弱いんだから、動いちゃ駄目だ!」

と言うロードの言うこと聞いたのは、泣かれそうだったからか。

怒るより言う事を聞く、セリの性格がバレていそうだ。


(なりふり構わないんだなあ)

結構なロードに感心しているセリだった。


因みに、カナンはロードの構い具合に幻覚だと無かったことにして警護をし、シュルトは頭を抱えた後、切り替えてセリの看病をしてくれた。


ロードは椅子と化して、セリにピタリッとくっついて温めたり

好き放題な感じも…。


(いや、気のせいだ。)


医師にも診てもらったし、看護はシュルトがしてくれた。

食事を食べやすくして、果物をもって来てくれた。


ただ、ロードが離れなかった。

(食事をアーンで食べさせられた。口元まで拭われたっ!)


病人なのか、子供扱いなのか迷うところだ。

そのセリの苦悩をカナンは生温い目で見ていた。



そんな日々に、変化を!

とセリの希望で午後から、ある場所に向かっていた。


広く、屋根のある訓練場だ。

外より暖かい環境に、ちょっと驚く。燃料に余裕があるんだろう。


議長が勧めてくれた講義は実技も行うそうで、普段兵士が使っているとカナンからきいた。じっと見る。


「どーした?」


「そう言えば兵士だったなーって。」

「オレ?!どこをど〜見ても兵士じゃん!」


感情豊かだし、しゃべりも軽い。普通の兵士とは違う任務が多いせいか

油断を誘ったり、存在を印象に残さないとかなってるんだろう。


(それにしては不憫ふびんな役割が多そう)と失礼な事を思うセリだった。


「上で見てるな。」

ロード達が2階の観覧席に行った。


仕事があるんだから、帰って良いけど?と言うのをセリはやめた。

泣かれそう。



始まった講義は

ここに来ている学生や職人に向けて

基礎の魔力のめぐらし方、管理を学ぶ。


魔力とは?から始まる初級の講義。兼、実技だ。


参加は、10人ほど子供が多い。

獣人の子は体格が良い。


犬系の獣人が目についた。耳が長い子は兎だろうか。

年齢に限らず教育の機会をらしいが、この時間帯は仕事中だ。


ボーッと説明を聞いていれば

「人間ごときが。」横からの声。


ここで過ごしていて初めて、敵意が剥き出しだった。

(お子様が何言ってるんだか。)


「制御を学ぼう。並んで座ってくれ」


セリは、列の最後尾に少し離れて座った。

前の子が緊張したのがわかったからだ。


セリは事を荒立てる気はない。紹介の議長の顔を潰したくない気持ちもある。結構、恩に感じているらしい。


魔力の循環、感覚的な助言があってから

実際に使ってみようとなった


3人ずつで初級魔法を使ってみる。

手に収まるボールほどが基本らしい。



火の魔法から始まった。

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