代替人格

 私が私である必要はない。

 ゆえに、代替人格オルタという技術は“私”を複製し、シチュエーションごとの性格傾向を与えて最適化する。そしてそれは、例えば、仕事用の人格、良き恋人の人格、家事をする人格などになる。どれも“私”ではあるが、私ではない。その時々、場面の文脈に最適な解答を、代替人格オルタによって提示する。

 そんな中で、実のところ、この私がオリジナルなのかについては疑問の余地がある。私が私である必要はない。ならば、オリジナルの存在に意味があるとは思えない。

 気づいてしまえば単純なことだ。存在するのに嫌気がさしたら、代わりを用意するので事足りる。

 私はもう、倦んでしまったよ。

 だから、”私”。あとはよろしく。

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