081


「――ッ!」


 天より降り注ぐ流星を受けてたまらずKBノックバックするモンスターたち。その隙にこれでもかと二刀を叩きこみ、一刹那いっせつなの間にコンボ数を稼ぐコトハ。


 スキル発動条件を満たした折、即座に直線上を駆ける真黒の斬撃はスキル〝横一文字〟。


 わざわざモンスターを束ねた甲斐かいあって、斬撃は前方に連なった多数のジャバウォックたち全てにHITした。そして、


「まだだ――一気に畳み掛けるぞ!」


 インベントリからミスリルロングボウを取り出し、手早くロッドと交換。


 放つスキルは先日ルドラを仕留めたアーチャー系列の上位スキル〝バウンスショット〟。


 それは放たれた弓矢が何重にも分裂し、跳弾する。アーチャー系列で最高峰の多段HITスキルだ。その分一発当たりの火力はかなり低いが、問題ない。俺はこの時を見越して、このスキルを選択したのだから。


「いっけぇえ!」


 手先から離れた矢が、舞のように踊り跳ねる。


 モンスターの数が多いだけあって跳弾した回数は尋常じんじょうでなく、総HIT数は百を超えた。


 敵の数によって威力が変動するスキルだが、コロシアムにはうってつけだ。ここで格上狩りしようと思うのなら、多段ただんHITスキル以外習得する選択はあり得ない。


「はああああぁ!」


 KBし続けるジャバウォック、これ見よがしにコトハが二刀で猛撃する。


 彼女のコンボ数は五十を超えた。その時、コトハ頭上に表示されたコンボ数のインジケーターが赤くきらめく。


〝百花繚乱〟が秘める第二の範囲攻撃は、視界内に捉えた全ての対象を切り刻む、多段HITスキルの――


影裂かげさき!」


 空中をいだコトハの二刀。その一振りに合わせて、空間より出でた黒の斬裂ざんれつがジャバウォックたちの満身を斬り付ける。


 抵抗もままならずのけぞるモンスター。終わらないKBにすかさずシューティングスターを叩きこむ。フィイのバフデバフによって上乗せされたダメージが重ねてKBを可能とする。


 かくして――


「――第十ウェーブを突破しました、一分後に第十一ウェーブへと入ります!」


 パーティーの強みを生かし、モンスターの性質を最大限にまで利用した俺たちは、難なく鬼門の竜もどきたちを殲滅せんめつ。続く十一ウェーブ目へと突入した。


「うおおぉぉ! マジかよあいつらやりやがった!」


「これはもしかするとあり得るぞ」


「もう賭けなんざどうでもいい。やっちまえ坊主ども!」


 これには会場も大盛り上がり。俺たちをあざ笑う声はもう聞こえない。


 コロシアムは残すところあと半分だ。KBが取れるラインまでは同様の作業を繰り返していけば突破できるだろう。怖いのは、KBラインが届かない――俺たちの火力が足りなくなる十五ウェーブからか。


 もっとも十一ウェーブ目の敵もまた、一発でも食らえば即死のクソゲーだし油断はならないんだけど。どちらにせよ〝激震〟を好む俺にはあまり関係のない話か。常にHP1状態に調整してるわけだし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る