カエルショタと白蛇お姉さんのあまあま同棲日常物はいかが?♡

まちだ きい(旧神邪エリス)

第1話:転生。そして出逢い

 拝啓、産んでくれたお母さんへ。

 ○月✕日、ボクは白蛇に巻き付かれ、死んでしまいました。本当にごめんなさい。

 でも、いい事もありました。それは何かと言うと、死後の世界を見れたということです。どうやらボクは短いカエル人生の中で近年稀に見る善良な個体だったらしく、神様が「次に生まれ変わる生物を貴方に選ぶ権利を与えます」と言うのです。

 ボクが昔葉っぱの影で休んでいた時、ある人間の少年を見た事があります。片手には美味しそうな三角の食べものを持っていて、それを歩きながら食べているのです。本当に美味しそうでした。


『――ボク、人間さんになりたいです』


 ボクは神様にそう言いました。

 人間さんになって色んな所に行ったり、色んな美味しいものを食べたりしたいのです。そうして彼女なんて作ったりして……ふふ、それはまだ先の話ですけどね。


 パッと光に包まれて。

 刹那、それが一気に凝縮され、ボクはいつの間にか周りに誰もいない一本道に立っていました。足元を見ると、なんと二本の立派な脚があるじゃないですか。顔に手をやってみると、鼻があって、耳があって、口があって……全部全部人間さんの作りになっているのです。そうです。ボクは人間さんに生まれ変わったのです。それも、前世の記憶を持ったままで。


「やった……」


 思わず声が漏れてしまいました。

 人間さんになれたのだ。やった、やったんだ。これでボクは自由だ。

 外敵に怯えることはないし、毎日の食料に困ることもない。雨が降らなくて干からびそうなひもじい思いをすることもないのです。


 ――と、そんな気楽なことを考えていたのも数日だけでした。


(お金がない……お腹空いた)


 どうやら人間さんというのは、お金というものがないと食べ物にありつけないらしいのです。ウキウキ気分でお店に入って商品を食べようとしたら、どちゃクソ叱られて、お店を追い出されてしまいました。


 お金、お金、お金が欲しい。

 住む家とか、友達作りとか、そんな事よりお金がないとどうしようもない。

 でもどうやったら手に入るかなんて、ボクには分からないのです。


 ……と、道端に座り込み困っていると。


「ケロちゃん……?」

「……へ?」


 人間の女性が目の前に現れました。

 雪のように真っ白なボブカットの髪に、切れ長の目、髪色とは反対に真っ赤な唇をグロスでツヤを出したその女性はボクを見るなり、すぐに駆け寄って、


 ギュゥゥゥゥゥゥゥ♡♡

 と、死ぬほど強く抱きしめてきたのです。


「う、あぁ」

「ケロちゃんだぁ……♡ この締め付けた時に出す声とか、締め付け心地とか……ああ、ほんっとかわいい♡ 食べたいくらい……♡」

「この感じっ、まさかあなたはっっ……ぐ、ぁ」


 ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ♡♡♡


 あまりにも柔らかく、大きな乳肉がボクの顔に押し付き、窒息死しそうなほど圧迫してくるのです。プラスして女性は大きく長い腕をボクの背中に回し、ギュウギュウと音が出るほど抱きしめてくるのです。いやいや、これは死にますよ、マジで死ぬ……っ。


「がっ、ぁ、ぅ、ぐるじぃ」

「あっ、ごめんねっ。また私ったら……」


 ようやく身体が離されたものの、女性はニコニコとしまりのない笑顔でこちらを見てきます。即座に理解しました。この締め付け具合、顔立ち、真っ白な髪……この人、この女の人は――



「前世で殺しちゃってごめんね♡ でも私、貴方のこと好きになっちゃったの……だから、ずっと一緒にいよ?♡ 一緒に楽しく過ごそ?♡」


 ボクを殺した、白蛇女さんだ。

 ああ神様、あなたは一体何がしたいのか。

 あるいは何もしたくないのか。

 絶望的な気分のままボクは彼女に見つめられ、身動きが取れないのだった。

 


 

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