第27話 イリーシャの実力
※本日は20時頃にもう1話投稿予定!
現れたロック・スネークを相手に立ち向かうドミニクとイリーシャ。
まずは先制攻撃を仕掛けようと、ドミニクが魔力を開放。
体長十メートル近いロック・スネークは、その外見の通り耐久力が高い。
ダブルヘッド・ベアに比べたらスピードこそ劣るものの、パワーとディフェンスは段違いに高い。
ドミニクは対ロック・スネークを想定し、戦術プランを立ててきた。
昨日、霊竜エヴァとの憑依によって得られる力を過信していた面もあって、危うくやられてしまうところだった。
「ドミニク! 次はしくじるなよ」
「はい!」
エヴァからも叱咤されたドミニクは表情からして違う。
顔は引き締まり、集中力も増している。
「今日は昨日のようにいかないぞ……」
決意を口にして、剣を構えると、すぐさま魔力を錬成する。
「くらえ!」
生み出した水魔法をぶつけ、怯ませたところに、イリーシャが飛び込んでいく。
「!? イリーシャ!?」
「任せて」
ドミニクとしては、もっと遠距離から魔法攻撃を仕掛けるつもりだったが、イリーシャは怯んだ相手の懐へ突っ込んでいったのだ。
さすがにそれは危険だ、とドミニクが声をかけるよりも先に、
「!?」
イリーシャの体に起きた異変に、ドミニクは絶句する。
力強く握られた拳が発光している。
「な、なんだ? 魔法?」
動きを止めたドミニクがようやく漏らした言葉。
その真意を確かめる間もなく、
「えいっ!」
ロック・スネークの懐に入り込んだイリーシャは、その光る拳を文字通りの岩肌に叩き込んだ。
ドゴォッ!
低く、鈍い打撃音がダンジョン内に響き渡る。
その直後、ロック・スネークの体はバラバラに飛び散った。
「なっ!?」
まさかの一撃決着。
「ふふふ、さすがは我が孫じゃ!」
エヴァは満足そうに叫んでいるが、アンジェとシエナ、そしてドミニクはイリーシャが持っていた想像以上の実力を前に呆然としていた。
「ま、まさか……あんなに強かったなんて……」
もはや乾いた笑い声しか出てこないドミニク。
いろいろと戦い方を考えてきたが、まさかたったの一撃で倒してしまうとはさすがに予想できなかった。
それだけ、竜人とエルフのハーフであるイリーシャのポテンシャルがとんでもなく凄まじいということだ。
とりあえず、モンスターを討伐した証しとしてロック・スネークの首を持ち帰る――つもりだったが、あまりにも巨体だったため、アンジェをギルドまで向かわせ、職人に来てもらうという形での証明となった。
◇◇◇
ギルド職員の審査により、正式に討伐完了が認められ、ドミニクたちは報酬を得ることができた。
「よし! これでゼオ地方へ向けて出発できるぞ!」
旅の資金が貯まったことで、ドミニクはアンジェ、シエナとハイタッチ。そして、
「よくやってくれた、イリーシャ」
今回大活躍のイリーシャの頭を優しく撫でた。
それに対し、照れ笑いを浮かべながらも一切抵抗しないイリーシャ。
「ほう……イリーシャがあそこまで心を許しているとはな」
「そんなに珍しいんですか?」
ふたりの姿を見て感慨深げに呟くエヴァに、アンジェが尋ねた。
「そうじゃな。まあ、ずっとワシひとりを相手にしておったからのぅ」
「でも、最近はずっとあんな調子のような気がしますけど?」
「うむ。実に喜ばしいことじゃ」
満足そうに頷く霊竜エヴァを見て、アンジェとシエナは笑い合った。
とにもかくにも、イリーシャの両親が所属していた冒険者パーティー――《銀狐》がいるゼオ地方へ向けて、ドミニクたちは改めて出発するのだった。
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