第7話 オリジナリティを求めて!
「見てろよ、RYOJI…!」
闘志に火がついたAKIOは、以前にも増して動画制作に打ち込んだ。目標はただ一つ、ライバルであるRYOJIを超えること。そのために、まずは敵を知ることから始めた。
毎日、RYOJIの動画を隅々まで研究する。歌声の響き、ハモリの構成、テロップの出し方、カットのタイミング…。分析すればするほど、その圧倒的な技術力とセンスに打ちのめされた。
「ダメだ…歌唱力も編集技術も、今の俺が真正面からぶつかって勝てる相手じゃない…」
焦ったAKIOは、RYOJIのスタイルを真似てみることにした。オシャレなフォントを使ってみたり、映像にスタイリッシュなエフェクトをかけてみたり。しかし、付け焼き刃の技術で作った動画は、どこかちぐはぐで、ただの劣化コピーにしかならなかった。自分の良ささえも消えてしまい、再生回数も伸び悩む。
「くそっ、何が違うんだ…。やっぱり機材か?もっと良いマイクがあれば、あんなクリアな音が録れるのか…?」
ネットでプロ仕様の高価なマイクを検索しては、その値段にため息をつく。才能だけでなく、資金力でも負けているのか…そんな無力感がAKIOを襲った。
完全に袋小路に迷い込み、制作の手が止まってしまったある夜。AKIOは、自暴自棄な気持ちで自分のチャンネルに寄せられた過去のコメントを読み返していた。
「高評価1(自分)」だった、あの最初の動画から。
そこには、RYOJIのチャンネルとは少し違う種類の言葉が並んでいた。
「編集に苦戦してるのが伝わってきて、逆に好感が持てます(笑)」
「AKIOさんが楽しそうに歌うから、こっちも楽しくなります!」
「完璧じゃないけど、一生懸命さが好き。応援してます!」
RYOJIへの賞賛が「技術」や「完成度」に向けられたものであるのに対し、AKIOへのコメントは、彼の「人柄」や「楽しんでいる雰囲気」に触れるものが多かったのだ。
ハッと、目が覚めるような感覚だった。
「そうか…みんな、俺の完璧な歌や編集が見たいわけじゃないのか…?」
最初の挨拶を決めかねていた時のことを思い出す。他人の真似をしようとして、結局「どうもAKIOです」という、ありのままの自分に行き着いたじゃないか。
「俺は、RYOJIになろうとしてた。でも、俺はRYOJIじゃない。俺は、AKIOだ…!」
技術で彼に勝つことはできないかもしれない。でも、RYOJIにはなくて、自分だけが持っているものがある。それは、不器用さや、悪戦苦闘する姿、そして何より、心から動画作りを楽しんでいるという熱量だ。
「これだ…俺の武器は、これなんだ!」
AKIOの中に、新しい道筋が見えた。
完璧な「作品」を作るのではなく、自分の「人間性」を見せていく。そうだ、歌っている映像だけでなく、編集に四苦八苦しているメイキング風景や、思わず笑ってしまうようなNGシーンも動画に入れてみたらどうだろう?
選曲も、流行りの曲を完璧に歌い上げるRYOJIとは違うアプローチをしよう。自分が本当に好きな曲、子供の頃に聴いていた少し懐かしい曲を選び、なぜその曲が好きなのか、想いを語るコーナーを作ってみるのも面白いかもしれない。
「完璧じゃない俺を、ありのままに見せる。技術じゃなくて、共感で勝負するんだ!」
それは、ライバルを模倣することをやめ、自分自身の土俵で戦うという決意表明だった。
AKIOはパソコンに向かい、迷うことなく新しい動画の企画を練り始めた。その顔は、焦りや嫉妬に囚われていた数日前とは違い、自分だけのオリジナリティという光を見つけた、一人のクリエイターの顔つきに変わっていた。
次回、逆襲の狼煙!
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