第58話 礼香への説明
「待ってたよ、ゆーた」
リリアンネの部屋では、リリアンネと礼香が座っていた。
「えっと、勇太? リリアンネさんは、どういう……」
かなり戸惑っている。
そりゃそうだ、いきなり連れてこられたかと思えば俺の隣の部屋だったし、何より扉を作ったのもたぶん見えてただろうな。
「そういうのを全部まとめて、今から話すよ。れーか」
俺が切り出そうとするよりも先に、リリアンネが話しだす。
「れーか。君は前に、私の生まれを怪しんでたよね?」
「え、ええ……」
戸惑いつつも肯定する礼香を見て、リリアンネはさらに続ける。
「まだ私の本名……正確にはフルネーム、かな。名乗ってなかったから今言うね。私の名前は、リリアンネ・アーデ・アークティア。惑星アークティアから来た、異星人なの」
「惑星、アークティア……」
ニュースで大々的に取り上げられるほどだ。礼香も名前は知っている。
「れーか、ゆーたと同い年だよね? だから、聞いたことはあると思うんだけど」
「も、もちろんです」
これまでと違うリリアンネの様子に、戸惑っている礼香。もはや隠す必要もなく、印象も変わっていた。
「アークティア人についての話は聞いたことある?」
「はい、それは」
「ならそこは飛ばすかな」
と、リリアンネは俺を見る。
「今から言う話は、ゆーたにも聞いてほしい話なんだ。たぶんゆーたは、薄々気づいてるだろうけどね」
「もしかして、龍善学長の話か?」
思い当たることを尋ねると、リリアンネはうなずいた。
「そうだよ、ゆーた。彼もアークティア人……の関係者だよ」
「アークティア人じゃないのか?」
「“半”アークティア人……と言うのが正しいかな。親のどちらかが地球人で、アークティア人との混血なんだって」
リリアンネはゆっくりと、噛んで含めるように話しだす。
「なるほどな……」
「ちょ、ちょっと待って!」
どうやら礼香は、ついてこれてないらしい。
「どうしたの? れーか」
「学長がアークティア人って……どうしてわかるの?」
「ああ、それね。簡単な話だよ、れーか。アークティア人は、自分以外のアークティア人、あるいはアークティア人の血が入った人を認識する能力があるの。どんな姿をしていても、ね」
それで、か。
心や未来が読めるのはリリアンネという明らかな証拠があるとしても、同族を認識する力まであるのは初耳だった。
「たぶん、あの学長はゆーたに味方してると思うよ。そこは安心していいかも」
「ああ……。だが、まだ問題はいくつもあるぞ」
「そうだね」
どうしたものか。
だが、今は迷ってどうにかなるものでもない。
「厄介なことに、なっちまったな……」
俺はやるせない気持ちに包まれながら、ぼやいたのだった。
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