第24話 高次元

「それは……どういう、ことなんだ?」

「うーん。口で説明するのも難しいし、実際にやってみてもやっぱり説明は難しいかな。一番手っ取り早いのはアークティア人になってもらうんだけど、それはそれで気軽にできないし、何より地球人には戻れなくなるし……」


 なにやらリリアンネは、相当に悩んでいるようだ。とりあえず、さっきの透明化の正体はまだまだつかめないらしい。


「あー、わかった。無理すんな。説明できないなら、それ以上は聞かねえよ」

「そっか。なら、ゆーたに甘えるね」


 結局、またも好奇心は不完全燃焼だった。

 それより……ちょっと、いやかなり限界なんだが。


「……先に体洗わせてくれ」

「いいよー」


 何とかして俺は、リリアンネとの密着状態から逃れた。

 危なかった……あれ以上長くくっついてたら、ナニしでかしてたか分からなかったぞ。

 結局俺は、体を洗った後は逃げるようにして風呂場を出た。


     ~~~


 それからは、倒れるようにベッドに寝た。天井を眺めながら、心を落ち着けようとする。

 けど……落ち着かない。リリアンネの体の感触が、今も残っている。

 あの場はなんとか踏みとどまったけど、もしこの後来られたら、耐えられる自信は本当にない。というか、いずれそういうことをしでかすだろう。


 ……つーかよくよく考えたら、据え膳食わぬはってやつじゃん。俺、男として恥ずかしいじゃん。

 いやでも、衝動に身を任すだけじゃ、どこかで危険な目に遭いかねないし……。


 などと自問自答や言い訳を繰り返すうちに、少し頭が冷えてきた。

 そういえばリリアンネは、アークティア人だったな。今まで学んだこと、ようやく思い出してきた。


 アークティア人は高次元の種族――俺たち地球人が3次元で、アークティア人はそれ以上――と呼ばれているのを。

 いまだ謎は多く、詳細な情報はわかっていないけど……いや、だからこそ俺は異星人に憧れて龍善大学に入ったかいがある。異星人学部の生徒として、これはまたとない絶好の機会だ。


 それだけにとどまらず、俺はリリアンネに並ならぬ思いがある。

 正直な話、だいぶ惚れちまった。俺がもうちょっと理性的でなかったら、今頃湯船で何をしていただろうか。

 ……いけね、考えたらまたムラッときた。


 うーん、一度俺から告白するかな? 正直、答えは分かりきってる。けどこういうのは形式が大事だ。

 少なくとも、まだ好きだと名言してないのにしていいことじゃない。青臭いと思われようが何だろうが、それは俺の考えだ。それに、俺はエロゲー主人公から生き様を学んじまったからな。今さら変えられるかってんだ。


 ……ん、待て。高次元か。もしかしたら、俺たち地球人にできないでアークティア人にできることもあるんだろうな。

 やっぱり原理はまったく分からないが、目の前で透明化したり、また姿を現したリリアンネのことだ。


 あー、どうにもエロゲーをやる気分じゃない。

 しょうがない、柄でもねえが予習して、寝るか。


 結局俺はリリアンネが上がるまで、次の授業の予習をしていた。普段やらないことをやって、無理やり性欲に向いていたエネルギーを発散させたわけだ。

 何とか落ち着いた俺は、そのまま眠った。




 まさか明日に、あんなとんでもないことが起こるとは知らず。

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