6「ヴィヴィアンの過去です」①





 カルとヴィヴィアンの登場に、アルフレッドは鼻で笑う。


「なにかと思えば、魔王ヴィヴィアン・クラクストンズと準魔王カル・イーラか。君たちだけがどのような力を持つのか情報を得られなかったとは、まさか転移とはね。言っておくが、現在、サミュエルくんの生家を……といってももうないが、中心に特殊な聖術を施してある。入ってくるのは自由だが、出ることはできないよ」

「んじゃ、てめーをぶっ殺して鼻歌歌って出ていくだけっすよー」

「勇ましいね。しかし、魔王たちでも太刀打ちできないというのに、準魔王風情でなにができる?」


 小馬鹿にした態度のアルフレッドに、カルも負けじと小馬鹿にした顔をする。


「私が相手にするまでもねーっす! ささ、ヴィヴィアン様、お願いしまっす。ボッコボッコにしてやってくださいっす!」

「……カル。もう少し真面目にしましょうね」

「ごめんなさーいっす!」


 あくまでも軽いノリのふたりには、余裕のようなものを感じられた。

 ヴィヴィアンは、アルフレッドと向き合う前にサムたちに顔を向ける。


「過去の因縁にあなたたちに巻き込んでしまってごめんなさい」


 そう言うと、アルフレッドに近づいていく。

 教皇の背後では、カリアンが控えているが、これと言って特に何かをするようには感じられなかった。


(――なにが起きるんだ?)


 ヴィヴィアンが戦うのか、それともなにか違うことをするのか、展開を想像できずサムたちにできるのは見守ることだけだった。


「久しぶりね、アルフレッド」

「……忌々しい最古の魔王よ。我が主である女神を封じて以来かな?」

「以前も思ったことだけど、やはりあなたは私に気づいていないのね」

「なにを言っている?」

「おかげでずっと準備ができたわ。でもまさか、この時代で聖女が揃ってしまうなんて思わなかったの。それだけは、本当に残念ね」

「だから、なにを言っている!」


 アルフレッドは、自分が知らないことがあることが不愉快なのか、余裕をなくし苛立ちを隠せない様子で怒鳴った。

 すると、ヴィヴィアンの魔力が高まる。

 規格外の魔力と言われている、サムや友也はもちろん、竜であるエヴァンジェリンを上回る魔力の放出に寒気を覚えてしまう。

 サム、ギュンター、友也、エヴァンジェリン、ゾーイが五人がかりで障壁を張った。そうでもしないと、人間のリーゼ、クリー、薫子にどのような影響があるかわからなかったからだ。

 しばらく凄まじい魔力放出に耐えていると、突如魔力が収まった。


「――何が起きた?」


 アルフレッドの問いは、サムたちの問いでもあった。


「ごめんなさい。とても久しぶりに力を使うことにしたから、少しだけ溢れちゃったわ」

「……あれで少しかよ」


 サムがリーゼを抱きしめたまま顔を引き攣らせた。

 だが、驚くことはまだまだ続く。

 ヴィヴィアンに変化が訪れたのだ。


「――な」


 驚きの声を上げたのは、誰だったのか。

 それとも全員が声を上げたのかもしれない。

 ヴィヴィアンの幼い肉体が、少しずつ成長していくのだ。

 サムと同じくらいの年齢から、もう少し成長し、十七歳、十八歳ほどにまで成長した。

 それに伴い、顔つきも大きく変わった。

 ヴィヴィアンの面影こそあるが、異世界人というよりも日本人の顔つきだった。


「――ありえない、そんな、馬鹿なことがあってたまるか!」


 ヴィヴィアンの変貌に、アルフレッドが叫んだ。

 しかし、サムたちは、なぜアルフレッドがここまで驚いているのか理解できない。

 だが、彼の次の言葉で理解した。




「なぜ、なぜ、あなたが生きている! あなたは亡くなったはずだ! 聖女日比谷白雪様!」






 〜〜あとがき〜〜

 クリーさん「くんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんかくんか」



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