34「エミル殿下とお会いします」②
「嗚呼っ、全裸の君! 僕はっ、僕はぁああああああああああああああああああ!」
「うわぁ」
エミル殿下のいる場所は、王宮の書庫だった。
彼は毎日勉強と武芸に励んでいるようだ。
冬の間は勉強面に重きを置いているようで、日々書物にこもっているようだ。
書庫の扉をノックしても返事はなく、どうしようと考えていると、中から執事が現れて入れてくれたのだが、そこには髪を振り乱しているエミルの姿があった。
「うわぁ。うわぁ」
「父上も母上も、なぜ全裸の君を諦めろなどと……っ! 兄上だってルイーズをずっとストーカーみたいに追い回していたのに、レイチェル姉上なんてただの変態押しかけ女房ですよ! 僕だけ、僕だけが、全裸の君をお慕いするのをやめなんて……悲恋だ!」
「……なんだかんだと元気ですねぇ」
落ち込んでいるようだが、それ以上に荒ぶっているエミルにサムは、ホッとしていいやら悩む。
「エミル様は、毎日全裸の君へのポエムを書き連ねるほどお慕いしているのですが、陛下からあきらめるように言われてしまい少々取り乱しております」
帰ったら駄目かな、なんて思っていると執事が声をかけてきた。
「ポエム? ああ、詩ですか」
「いいえ、ポォエムです」
「こだわるところですか?」
やはり王子付きの執事だ。少し癖が強そうな気がする。
「もちろんです。しかし、ちょうどいいところに来てくださいました、サミュエル・シャイト宮廷魔法使い殿」
「俺的には嫌なところに来ちゃったなぁって感じなのですが」
「そう言わず。ステラ様を娶り、セドリック様、レイチェル様を見事想い人と結婚させることができた恋の伝道師! ならば、エミル様も」
「むーりーでーす」
「なんと!?」
どうやら執事はエミルのためにサムが一肌脱いでくれると期待していたようだが、残念だが、エミルにはメルシーを諦めてもらう説得にきたのだ。
「そりゃ、俺も男の子ですから好きな人と結婚したいのはわかります」
「ならば!」
「――でも、メルシーに名前も顔も覚えられていないんですよ? どうしろと?」
「サミュエル・シャイト殿のビンビンパワーで何卒!」
「ビンビンは万能じゃないから!」
不用意に大きな声を出したのがいけなかった。
「あ」
荒ぶるエミルがぴたりを動きを止めて、こちらを見た。
まだ十二歳の少年とは思えない凄みを宿した瞳と目が合ってしまい、ちょっと腰がひけた。
エミルはすっと立ち上がると、身だしなみを整えて、優雅に一礼した。
「ようそこいらしてくださいました。サミュエルパパ」
「おい、こらぶっ飛ばすぞ!」
〜〜あとがき〜〜
エミルくん搦め手を使い始めました。
コミック1巻発売中です!
何卒よろしくお願い致します!
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