10「最後のイベントです?」①





「ぎゃあぁああああああああああああああああああああああ! 女装した男どもが溢れてるぅぅううううううううううううううううううううう!」


 笑顔から一変。

 女体化が解けで男に戻った人々が視界に飛び込んできたサムが絶叫する。

 舞台の上では、ギュンター以外も性別が戻っていた。


「サム! 嗚呼、僕の愛しき少年よ! 君が喜んでくれて嬉しいよ!」

「だーっ! 抱きつくな! 喜んでねぇ!」

「ふふふふ。照れずともいいのだよ! 女神エヴァンジェリン様は、女体化が解ける条件にサムが喜び笑顔になることを設定したのだよ。つまり、呪いという概念が、世界が、君が喜んでいると判断したのさ!」

「いやぁあああああああああああああああああああ!」


 どんな条件で女体化させているんだ、とサムが叫ぶ。

 万が一、女体化が解けなかったら、あの偽物女神はどう責任を取るつもりだったのだろうか。


「わ、わたくしの美しい女体が」

「――僕の本当の姿が」

「女体化からはじまる第二の人生を送ろうと思っていたのに」

「お前たち、割と女体化を肯定的だね!」


 男性に戻ってしまったことを嘆く青年、中年、少年と、様々な年齢層に女体化は受け入れられていたようだ。

 さすがスカイ国民と戦慄を禁じ得ない。

 悲しむ男性たちに、ギュンターが声高々と告げる。


「安心したまえ、諸君! 女神エヴァンジェリン様ならば、君たちを再び女体化させてくれよう!」

「――え!?」

「おい! どこかから、マジでって感じの声がしたぞ!」

「今日から女神エヴァンジェリン様を崇めようではないか! そして、女神エヴァンジェリンに選ばれた聖者こそサミュエル・シャイトを讃えよ!」

「ちょ、まて、お前なにを勝手なことを、聖者とか言わないで!」


 希望に満ちた目で、国民たちがサムを見ている。

 この場から逃げ出したくなったが、「今日は祭りだからいっか」と諦めたように肩をすくめる。

 サムもなんだかんだ言って、スカイ王国のノリが嫌いではないのだ。


「女神エヴァンジェリン!」「女神様!」「エヴァンジェリン様!」

「聖者サミュエル・シャイト!」「聖者様!」「性者様!」「精者様!」サミュエル様!」「サム様!」


「ねえ、なんか違うの混ざってなかった!?」


 民たちがエヴァンジェリンとサムの名をコールし続ける。

 少し離れた場所で、死んだ目をしているエヴァンジェリンが竜王炎樹と姉青樹に両脇を抱えられているのを見つけた。三人のとなりでは、霧島薫子が苦笑いを浮かべている。

 エヴァンジェリンはこれからも苦労するだろうし、薫子も巻き込まれて大変な目に会うだろうが頑張ってもらいたい。


「今回は女体化祭りを開催させていただいたが、ご要望により次回は男体化祭りを行いたいと思う!」


 ギュンターの宣言に女性たちから歓声が上がる。

 男性たちは死んだ顔になった。


「――は?」


 サムは耳を疑った。


(あれ? 今、この変態、なんてった? 次回? 次回があるのこれ!?)


 サムが身体を小刻みに振るわせる。


(まさか、毎年やらないよね? ね?)


 不安だが、今、この場で尋ねる勇気がなかった。


「さあ、ここで最後の締めを飾るイベントを始めようではないか!」

「わぁあああああああああああああああああああああああ!」

「まだあんのかよ!」

「サミュエル・シャイトの女体化だ!」

「は?」

「わぁあああああああああああああああああああああああ!」


 歓声が上がり、盛り上がりを見せる。

 みんなが待っていました、と笑顔だ。

 しかし、サムはこの事態が理解できなかった。そして、そのわずかな思考の停止が、まずかった。


「ふふふふ、サム。今度は君の番です」


 女体化が解けながらもアイドル衣装が似合う友也が、背後からサムを羽交い締めにする。


「はははははは! 女体化だって悪いもんじゃないぜ!」

「兄貴、すみなせん!」

「サムお姉ちゃんもありだと思うぞ!」

「サム、すまない。民の期待に応えてほしい」

「まあ、一度くらい女体化する日があってもいいんじゃねえか?」

「……娘たちが楽しみにしているので、その、申し訳ありません」


 同じく女体化が解けたダグラス、ボーウッド、レーム、ジョナサン、デライト、蔵人がサムをそれぞれ押さえてくる。

 さすがにこの面々に一度にこられてはサムも穏便に対処ができない。


「さあ、サム! 君を美少女にしてあげよう!」

「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああ!」





 〜〜あとがき〜〜

 次回「愛のキリサキラブコミュニケーション!」ですわ!


 新作始めておりますわ。

 お口直しにどうぞ、ですわ!

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