間話「日本出身組の集いです」①





「サム君、友也君、UMAを探しましょう!」

「――は?」

「なにを言っているんですか、薫子君?」


 元日本人の集いとして定期的に集まっているサム、友也、薫子。

 スカイ王国王都になる馴染みのレストランの一部屋を予約し、時間があればこうして食事をしながら近況報告をしている。

 いつもは本当に他愛無い話ばかりなのだが、今日に限っては薫子が鼻息荒く興奮気味だった。


「UMAよUMA! 未確認生物!」

「それは知っているけど」


 UMA――未確認生物、または未確認動物と呼ばれる、目撃例や伝聞はあるが実際に確認されていない生物のことである。


「私は感動したの。河童や、ドワーフや人魚がいるなんて! 昔読んだ童話や、映画、漫画の中だけの存在だと思っていたのに!」

「薫子さんもファンタジーを愛する人だったんだね」


 サムが同志を見つけたことに感動していると、「違うわよ」と薫子は否定した。


「私はね、幽霊とか、UFOとか、UMAとかが好きなの! 毎日、動画サイトを見ていたし、SNSで同じ趣味の人と熱く語りもしたわ!」

「あー、そっちかぁ」

「そっちかって、なによ! サム君だって、ファンタジーが好きで魔法が好きで、変態が好きとか、私以上じゃない!」

「俺は変態は好きじゃいよ!? 友也と一緒にしないで!」

「こっちに飛び火させないでくださいよ! 僕が体質のせいで誤解されやすいだけであって、感性はこっちじゃ生きにくくて苦労しているんです!」


 友也が変な釈明を始めるが、薫子は無視して続けた。


「ビッグフッド、雪女、ネッシーだってこの世界ならいるはずなの!」

「……ネッシーはいないでしょ。あれはネス湖の怪獣の通称だからさ」

「そう言う話をしているんじゃないの! サム君、まさか、君……浪漫を失ったの?」

「――っ」


 ツッコミ役のサムに薫子の鋭い言葉が刺さる。

 サムは動揺を隠せずにいながら、自分に問いかける。

 河童、ドワーフ、人魚、竜や魔王、吸血鬼などと出会い、もしかして自分にはファンタジー世界を追求しようとする浪漫を失ってしまったのではないか、と。

 いや、そんなことはない。サムの心には、ウルと各地を見回った時の胸の高鳴りが今も残っている。


「まさか! 俺はいつだって浪漫を追い求めているのさ!」

「じゃあ、探しに行きましょう!」

「応とも!」

「あー、その、ふたりとも」


 やる気に満ち溢れるサムと薫子に、おずおずと友也が声をかけた。


「とても言いづらいのですが、ビッグフッドと雪女は普通にいますよ。あとネッシーよりも珍しい竜と竜王が知り合いなので探す必要はさすがに無いでしょう」

「ちょっと友也君! 水を差さないでよ! 三日前にラッキースケベしたこと訴えるよ!」

「それはごめんなさい! でも、割といますよUMA。さすがにUFOはいませんが、異世界があるんですから宇宙人くらいいそうですけどね」

「漫画の中だけだと思っていたラッキースケベが実在して猛威を奮っているんだから、UMAくらいはいるかぁ」

「僕をUMAと同じ扱いをしないでください!」


 友也の言う事はわかる。

 サムも日の国に行ったとき、鬼を見たし、妖怪の類を一部とはいえ目撃した。

 ある意味、最大のUMAとも言える竜がいるのだからなんでもいそうだと思えた。


「じゃあ、じゃあ、ツチノコは!? ツチノコはいないの!?」

「さすがにツチノコはいませんねぇ」

「確かツチノコって昔懸賞金かかってたよね」

「ありましたね! 懸賞金といえば、国鱒とか見つかったんでしょうかね?」

「何古い話しているの! 国鱒なら見つかっているじゃないの!」

「マジですか!?」


 きっとそれぞれの生きていた時代が違うのだろう。

 少々の情報の誤差があるようだ。


「あー、なんとかして地球に帰りたいわ」

「やはり故郷が恋しいんですね」

「うーん、両親や友達に会えないは寂しいけど、もう割り切れたかな。こっちのみんなもいい人たちだし。でもね、河童と人魚を捕まえて地球に帰ったら世紀の大発見じゃ無いかしら!?」

「……き、気持ちはわかりますけど」

「その場合、河童さんも人魚さんも解剖コースじゃね?」


 こんなくだらない話をしながら、日本出身組の交流は続いていく。





 〜〜あとがき〜〜

 祝日なのでちょっと間話ですわ。

 次回も続きますわ!

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