2「近況報告です」②




 控えめに言って、花嫁たちと過ごした夜は最高だった。


「リーゼ様のときにも思ったけど、女の人って、色々な表情を持っているんだなぁって、思い知らされたよ」


 この場で多くを語るわけにはいかないが、花嫁たちはそれぞれ昼間とは違う表情をたっぷりサムに見せてくれた。


「ステラはやばいくらい可愛かったよ」


 ステラはとても受け身だった。

 普段から勉強家である彼女らしく、初夜の前にいろいろ勉強してあったそうだが、それらを発揮できないほど恥ずかしさでどうにかなりそうだったらしい。

 陶芸品のように滑らかで白い肌は、言葉にならないほど美しかった。

 そんなステラが可愛らしく、回数を重ねてしまったのは言うまでもない。


「花蓮はなんというか、ギャップが凄かったなぁ」


 普段からマイペースで言葉数も少ないこともある花蓮だが、夜になると真逆だった。

 とにかく反応が良く、声をたくさん出してくれた。

 花蓮の奥底に眠る感情が言葉となってサムにたくさん伝えられたのだ。

 鍛えられた肉体はしなやかで、特に脚が綺麗だった。

 なによりも花蓮自身が積極的だった。求められて嬉しくない男などいるはずがない。


「水樹はね、うん、ボクっ子っていいよね」


 水樹も花蓮同様に感度抜群だったが、反応してしまうことに驚き、恥じらう姿がとても可愛かった。

 剣士であるゆえ、引き締まったスレンダーな肉体は美しく、それでいて女性ならではの柔らかさがあった。

 そんな彼女が「僕」と一人称を使うのだ。うん、たまらない。


「アリシアは、もう本当に積極的でした。うん、子竜と会ったときから実は行動力があるとわかっていたけどさ、凄かった」


 出会った頃から、アリシアは大人しい控えめな性格だった。男性が苦手で、ちょっと恥ずかしがり屋で、――しかし、いざというときにアグレッシブに動くことのできる子だ。

 結婚式でも、初夜を迎えるため同じベッドの上で顔を合わせたときも、彼女は嬉しさと恥ずかしさを表情にこれでもかと浮かべて、耳まで赤くしてした。

 そんなアリシアにほっこりしつつ、いざ身体を重ねると、――一変した。

 読書家である彼女は、夜の知識も豊富であり、その知識を実践しようと頑張ってくれた。あとで聞けば、サムを喜ばせたい一心だったと言ってくれたが、びっくりするほど積極的だった。


「もちろん、リーゼとも過ごしたよ」


 身重な彼女と身体を重ねることはしなかったが、久しぶりにゆっくりふたりきりの時間を楽しんだ。

 他の娘たちはどうか、と聞いてきたので順調であることを伝えると、珍しく彼女が嫉妬した。

 子供っぽく頬を膨らませてつんけんするリーゼは可愛らしく、でも、ご機嫌を取ろうとサムは頑張った。

 たくさんいちゃいちゃして、濃密な時間を過ごした。

 リーゼはとても積極的で、お腹に負担がない範囲でいろいろなことをしてくれた。

 ちょっと罪悪感と背徳感があったが、むしろそれに気が昂ってしまったのは内緒だ。


「いろいろ心配かけたけど、仲良くやってるよ。奥さんたちもみんな仲良いし。正直、結婚生活を六人で、とか悩んだんだけど、意外とうまくいくものだね」


 さすがにみんな揃って夜を過ごすことはならなかった。

 花嫁たちが姉妹同然とはいえ、やはり恥ずかしさはある。

 今はしっかり、ひとりひとり奥さんとしてサムと愛し合いたいという要望に、しっかり応えようと思う。

 ただ、いずれはみんなで、とお言葉をもらっているので、ちょっと期待しているのは秘密だ。


「うへへぇ……おっと、失礼。旦那様、いやお義父様たちも元気だよ。メイドさんから聞いたんだけど、俺たちを見て新婚生活を思い出したとやらで、毎晩頑張っているらしい。もしかしたら、ウルの弟か妹ができるかもね」


 早く孫の顔が見たいと楽しみにしているウォーカー伯爵家に、もしかしたら新たな命が宿る日が来るかもしれない、とサムは苦笑した。

 なんにせよ、ウルを失っても、家族は前に進んでいる。

 ウルが望んだように。


「そういえば聞いてよ。結婚したばかりだって言うのに、見合いの申し込みや、側室、愛人に娘をどうですか、なんて声が届いているらしいよ。お義父様が処理してくれているみたいだけど、なんだかねぇ」


 サムと繋がりを持ちたいという家は多いそうだ。

 宮廷魔法使いであり、スカイ王国最強の魔法使いであるサムの血を欲しているのもそうだが、王家と繋がりが持てるのもメリットとして大きいらしい。

 一応、隠してはいるが、サムが王家の血を引いていることも、知っている人間はいるとのことで、その辺りを狙っている貴族や成り上がりたい商家も多いそうだ。

 ただ、サムとしては、リーゼたちのようにちゃんと愛し合っている女性と幸せになりたいのであって、打算や親の命令などを受けた女性と家族になるつもりはない。

 貴族らしくないことは承知しているが、そのくらいのわがままを言えるくらいの力はあるので、押し通すつもりだ。


「俺の話はこのくらいかな。話出したらきりがないけど、元気でやっているよ。で、だ。ウルが一番気になっているのは、ギュンターとクリーのことだと思うけど。まったく、ウルがあんな場面でとんでもない発表をするだけしていなくなるから、あのあと大変だったんだから」



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