9》♣︎動物たちの救出〜悟られる〜♣︎

 クリオネアクオレは魔宝石の使い方をトウマに教える為、花柄で明るい赤紫の布袋から色違いの魔宝石を3個とり出し見せた。


「トウマ。これが魔宝石よ」


 そう言われトウマはクリオネアの左の掌の上に並べられた赤、青、緑の魔宝石を覗き見た。


「これが魔宝石か、綺麗だなぁ。だけど、どうやって魔法を使うんだ?」


「まぁ見てて……。まずはぁ、そうねぇ。この赤の魔宝石を使って説明するわね」


 クリオネアはそう言い右手で赤の魔宝石をつまみ地面にかざし、


 《フレイムボム!!》


 そう呪文を唱えると一瞬で赤い魔法陣が描かれ、そこから炎の弾が出現し勢いよく地面に直撃した。


 それを見たトウマは首を傾げた。


「それって普通の魔法だよな?」


「確かにそうね。だけどこの魔宝石があれば、魔法を使う時に、いちいち詠唱を長々と唱えなくてもいいのよねぇ」


 そう言いながらクリオネアは魔宝石を花柄で明るい赤紫の布袋の中に戻した。


「ん〜、いまいち分からない。詠唱ってなんだ?」


 そう言われクリオネアは困惑の表情を浮かべた。


「魔法を使った事がないなんて言わないわよね。さっきそれらしき魔法を使っていたようだったけど?」


「ん?ああ。簡単な魔法なら使える。だけど詠唱って唱えてたかな?」


「ねぇトウマ。さっきも気になってはいたけど。どうやって魔法を発動させているの?」


「魔法……そうだなぁ」


 そう言うとトウマは右手を地面スレスレにかざし、


 《スクリューカッター!!》


 そう唱えると紫の魔法陣が現れ約1メートル範囲の草をキレイに刈りとった。


 それを見たクリオネアは驚き、


「トウマ!?……あ、あり得ないわ!詠唱もせずに呪文を唱えるなんて。坊やはいったい、なに者なの?」


「なに者って言われても……」


 そう言われトウマは、ここで自分の魔法をクリオネアに見せたのはまずかったかと思い、この後どう誤魔化そうかと考えた。


(……なるほどねぇ。この様子だと……だいたいだけど見当がついたわ。

 この時期に異質な存在……そうなると、トウマはこの世界の人間ではない。

 だとしたら確かにアルベルト様の言う通り、今は隠す必要がある。

 でもこれはあくまでも、あたしの推測があっていればの事だけどね)


「ねぇトウマ。なんとなくだけど、坊やの正体が分かっちゃった。だけど、もしそうなら、こんな所で道草をくってて良いのかしら?」


「そ、それは……。だけど何で、オレがこの世界の人間じゃないって分かったんだ?」


「トウマ……あのねぇ。あえてあたしが伏せて言ったのに、自分から言ってどうするの?ハァ、これじゃ先が思いやられるわ」


 そう言われトウマは苦笑した。


「まぁここには、あたしとトウマだけだからいいけど。これからは気をつける事ね。坊やはかなりお人好しで素直すぎて騙されやすそうだからねぇ」


「うん。気をつけるよ!それで、この通信用の水晶のペンダントの使い方って、さっきクリオネアさんが、赤の魔宝石を使った時のやり方でいいのか?」


 トウマがそう言うとクリオネアは首を横に振り、


「……いいえ。少し使い方が違うのよね」


 そう言うとクリオネアは、自分が持つ通信用の水晶のペンダントを手に持ち、


「さっきの魔宝石は属性により色が決まっていて、属性魔法ならどんな魔法でも使う事ができる。だけど残念な事に5回までしか使えないのよねぇ」


 そう言うとクリオネアは水晶のペンダントを見ながら、


「だけどこの水晶は、普通の魔宝石とは異なり、宝石自体に魔法陣と呪文を組み込む事が可能なのよねぇ」


「それって……。じゃあ、この通信用の水晶の使い方って」


「トウマでも、流石に気づいたようね。そう、通信用の水晶はそれ用に作られているから、魔力を注ぎ相手の事を想像し名前を言えばいいだけ」


「なるほど……そうか」


 それを聞きトウマは試しに、通信用の水晶のペンダントを左の掌に乗せるとクリオネアの事を想像し名前を言った。


 すると、クリオネアの持っている通信用の水晶がひかり出した。


「トウマ……なかなか覚えがいいわねぇ。じゃ使い方は分かったわね」


「うん」


 トウマがそう頷くと、クリオネアは荷馬車の中を覗きながら、


「ちょっと、話が長くなちゃったわね。じゃそろそろ動物たちを逃がしましょうか」


 そう言うとクリオネアは荷馬車の中へと入っていった。


 そしてトウマはその後から荷馬車の中に入った。

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