第13話 感情

 次の日も、また次の日も私は三來ちゃん達について行った。

 あの日褒められたからかもしれないが、もっともっと頑張らなくちゃと決心したから。

 “怖い”感情を克服して、みんなのために、街を守るために、そして何より、三來ちゃん達と一緒に戦えるようにしなくてはいけない。


「お待たせ〜!」

「来たか」

「今日は何処へ?」

「...今のところ奴らの気配がないから、久しぶりに“図書館”へ行こうと思って」


 あ、私が以前行った“本”を管理しているところだね。

 そして...三來ちゃん達の“家”でもある。


「お帰りなさい。...久しぶりですね、暁月彩芽」

「お久しぶりです」


 リビングらしきところで、三來ちゃん達とおやつを食べる。


「彩芽ちゃん...もう、戦いには慣れてきた?」

「うーん、まぁ慣れてきたかなぁ...」

「でも、まだ悩んでるんだろ?どうしてそこまで悩んでるんだ?」


 どうして、と言われてしまえば答えは一つしかない。


「...慣れてはきたんだけど、まだ...“怖い”感情を克服出来てないから...」

「...暁月さん、それは致し方のないことだよ」


 啓くんが、フォークを置いてそう言う。


「“怖い”という感情は、人の“本能”からでてくるようなもの。危険から遠ざかるための一つの手段なのよ」

「確かに、“怖い”という感情は人の行動を制限してしまうものなのかもしれない。でも、“生き残る”ための手段なんだ。だから、“怖い”っていう感情を克服しようとしても出来ない」

「でも...みんなは戦いの時は“怖い”って思ってないんじゃないの?」

「...私達も、戦いの時にも“怖い”と思ったことはある。だけど、自分は今怖がっているっていう自覚を持ってしまったら足がくすんで動けないどころじゃない。だから、“押し込む”しかないの。冷静に見えても、私達も人だから“怖い”って思うことはあるよ」


 みんな...怖がっているんだ。私だけじゃないんだ...。


「一條三來、少し二人だけでお話をしてもよろしいでしょうか?」

「あら、みんなに話すことかしら?」

「...いいえ、あなたと話す事があります」

「わかったわ。朔来、申し訳ないけどあとはお願いね」

「りょーかーい!」


 三來ちゃん、館長さんとお話?一体どうしたんだろう?


「...それで、話っていったい何よ」


 館長の部屋に連れて行かれた私は、姿の館長を睨みつける。


「そこまで警戒なさらなくても...暁月彩芽のことです」

「...暁月さんのこと?」

「ええ、立ち話もアレですからこちらへ」


 ソファに座るよう促された。まぁ確かに立ち話も良くないわね。


「...暁月彩芽のことを調べたら、驚くべき事が判明しました」

「...」

「もし彼女が“司書”になったら、貴方達をも超える“力”を持つ“司書”になる」


 私達をも超える“力”を持つ司書になる...?!

 暁月さんが...?!

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