第10話 家族
...どうしよう。
素質があるとはいえ、命懸け。
保留は出来るらしいが、なるべく早く、決断しないといけない。
『私も街を守りたい』だなんてなんでそんなに軽々しく言ってしまったのだろうか。
「...お気持ちはわかりますが、そんなに思いつめないほうがいい。心が苦しくなってしまいますよ?」
「すみません...私、みんなの...三來ちゃん達の力になりたかったのに...怖くて...決断ができないです...。保留に...していただけませんか?」
「ええ、勿論。よく御自身と相談してくださいね」
怖くて震えている私の手を、館長は優しくとってくれた。
「さぁ、皆様のところに戻りましょう」
「彩芽ちゃん!」
「朔来ちゃん...」
「...その表情だと、保留にしたようだな」
啓くんが、私を見て言う。
「暁月彩芽が保留にしたいという事で保留にしました。御自身とよく考えたい、と」
「...そう。ならばいいわ。暁月さん、ほんとによく考えるのよ」
その後、私は三來ちゃん達の誘導で外へ出た。
まだ空は澄んでいる青みを残しているが、ふと後ろを見るとうっすらと月が見える。
「...気をつけて」
「ありがとう。...三來ちゃん達は家に帰らないの...?」
「...あー、俺らの家はあそこなんだ」
「そっか...ごめんね...」
聞いてはいけない事を聞いてしまった。
罪悪感が半端なく広がる。
家に帰り、ベットに倒れ込んだ。
今さっきの言葉の意味を考えると三來ちゃん達のご両親は...
考えるのをやめよう。
「(私、酷い事を聞いてしまった...ごめんね...みんな)」
そのまま私は眠ってしまった。
朝、起きると制服のまま寝ていたことに気がつき、慌てて朝風呂に浸かった。
ぽちゃんと、お湯がはねる。
「(...悩んだってダメだよ!しっかりしないと私!!)」
頬っぺたを叩く。
お風呂から上がり、制服に着替えて朝ご飯の準備をした。
『昨晩、ご飯食べられなかったでしょ?此処に置いといたから、温めて食べてね。母より』
机の上に置いてあったメモ用紙にそう書いてあった。
すぐそばには昨晩、私が食べ損ねたホワイトシチューがそこに。
電子レンジで温めて、食べてると
「彩芽〜おはよう」
「おはよう!母さん」
母さんが起きてきた。
父さんは、まだ出張中。
今は母娘二人で暮らしている。
「彩芽、お弁当は?」
「今作ってるよー」
「え、今は食べてるんじゃ...?」
と、電子レンジの音が鳴った。
おそらく、暖まったという合図だろう。
「冷蔵庫のあまりをお弁当にしちゃおって思ってね」
「いいわね」
ご飯を食べ終えた後、電子レンジに入っている食材を出して、お弁当に詰めた。
「じゃ、行ってきます!」
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