第8話 霧の先には

「え、さ、朔磨くん...」

「あー、ちょっとな...」

「サク...また喧嘩したの?」


 という言葉に私は驚いた。

 え、朔磨くんって喧嘩常習犯?


「はぁ...ったく、いくら喧嘩を吹っ掛けられたからってスルーすればいいのに...」

「け、喧嘩を吹っ掛けられた...?」


 はぁっと言って三來ちゃんは話をし始めた。


「私達は、周りからは“ごっこ遊びの集団”だと言われているのよ。まぁ、初めはあんなこと言ってたからだと思うけど...」

「私達、馬鹿だったよね〜。“司書になってウワサや怪談を倒しているんだ!”って言いふらして...」

「僕はやめとけってあれほど言ったけどなぁ」

「そんで俺ら、笑われたよ。“まだ小学生のごっこ遊びをしてんのか?”って。こっちは真剣に話してんのにさ...」

「そんな事があって、たまに私達を馬鹿にするアホがいるのよ。朔磨はそのアホ共の挑発に乗って、喧嘩をしてる。ったく...怒られるのはこっちなんだから...」


 そんな事が...確かに..信じがたい話だけど、馬鹿にするのはおかしいよ...


「んでさっき、俺に喧嘩吹っかけたからコテンパにしようとしたら逆にやられたっていう事だ」

「だ、男子の喧嘩って激しいんだね」

「まぁ、女子を巻き込まないようにしてるからな」


 と言ってると、深い霧に包まれた。


「え、え?」

「あーこれ見えてるんだね」

「...もう直ぐだから逸れないようにして」

「だったら三來先頭で朔来、暁月さん、朔磨、僕の順番で並んだほうが確実じゃないか?」

「だね!」


 啓くんの助言で並ぶことにした。

 先へどんどん進んでいくにつれ、霧が徐々に濃くなってゆく。

 逸れないように前をしっかりと向いて歩く。


「この霧の先に何があるんだろう?」

「...行ってからのお楽しみよ」


 しばらく歩いていると、霧が徐々に晴れてきた。

 その先にあったものは...


「わぁ...!」


 レトロな雰囲気が漂っている古い木造の建物。

 一軒家のように見えるそれは、まるで別世界へ来てしまったかのようだった。

 所々に苔やツタが生えているのもまたいい感じ。

 そばに咲いている花も見たことないものばかり。

 メルヘンチックな建造物に、私はつい見惚れてしまった。


「暁月さんはああいう建物が好みなの?」

「うん!」


 早速、中に入ることに。


「...あ、あれ?」


 開けて入ってみると外装と釣り合わないような景色が広がる。

 何処を見ても本 本 本だらけ。

 その真ん中にある広い丸いテーブルのそばに、男性が一人、こっちを見てにこやかに挨拶をする。


「お帰りなさい。...おや?そこにいる女の子は...?」

「アヤ、アヤ!!」


 朔来ちゃんに揺さぶられてハッとした。


「アヤも、この“何か”が見えるの?」

「え、“何か”って...男性が目の前にいるけど...」

「...暁月さんには“男性”に見えるのね...」


 意味深な言葉を言われて私はえ?と素頓狂すっとんきょうな声を出してしまった。


「...貴方、名前はなんというのです?」

「あ、暁月彩芽です...」

「なるほど...四人ともでかしましたね。まさか素質のある子を連れてくるなんて」

「え、素質?一体何を...?」

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