第24話『体重大事件・4』


やくもあやかし物語・24


『体重大事件・4』   






 お守り石のお蔭か、妖怪メイドは付いてこなかった。




 家に帰ってお風呂掃除。


 いつもより念入りにやる。


 お爺ちゃんが町会の寄合で遅くなるってお婆ちゃんが言ったし、からだ使うことで妖怪メイドを頭から追放したかったし。


 そして……からだ使ったら少しでもダイエットになる?……あ、ちょっと頭をよぎっただけだからね、あくまで、お爺ちゃんにきれいな一番風呂に入ってもらいたいからなんだよ!


 額に汗するくらいにお風呂掃除して、廊下のハカリに片足を載せる。


 カチャリ


 片足だけで、針が十キロを指す……グヌヌ……全身乗っかろうかと迷っていたら玄関が開く気配!


 カシャン(;^_^!


 慌てて足を下ろして玄関へ。


「おかえり、お爺ちゃん。きょうは念入りにお風呂掃除やっといたからね」


「ちょうどよかった、ホレ」


 お爺ちゃんは丈夫そうな紙袋を突き出した。


「なに?」


「田中さんからもらったんだ、プレステ5を買ったんで古いのが余ったって。やくもにあげよう」


「え、プレステ4!?」


 プレステ4は持っていたけど、引っ越しの荷造りの時に壊してしまってご無沙汰していたのだ。


「ありがとう、お爺ちゃん!」


 お守り石のご利益だろうか、さっそく部屋に戻ってプレステ4を据え付ける。お風呂の方からお爺ちゃんの鼻歌が聞こえる。陽気なお爺ちゃんは、よく鼻歌を歌ってるけど、今日はいつもより楽し気だ。わたしがむちゃくちゃ喜んだからだ。こんな喜び方、社交辞令ではできないもんね。タイミングがすごく良かった、思わずお地蔵さんの方角に手を合わせる。


 プレステ4ではゲームもするけど、DVDのプレイヤーとして使う方が多い。


 持ってるDVDとかブルーレイは欧米のが多い。日本のアニメソフトは何万円もするけど、欧米のは何千円で買える。字幕の処理とかの問題はあるんだけど、気にしなければ断然お得だ。


 でも、欧米のは普通のプレイヤーでは規格が合わなくて再生できない。そこへいくとプレステ4は欧米のソフトでも再生できる。リージョンフリーっていうらしい。棚の上に飾り物になっていたソフトから『俺の妹がこんなに可愛いわけがない!』を取り出して再生する。実に半年ぶりだ!


 メニューの中から2を選択する。桐乃が京介に付き添ってもらって、初めて『オタクっ娘集まれ』のオフ会に参加するところだ。桐乃は、ここで初めて黒猫に出会って仲良しになる。


 コミュ力に難ありの二人が仲良くなるには沙織バジーナや京介の尽力があるんだけど、お互いイキイキと罵りあえるほどの仲良しになる。いつものように膝小僧を抱えながら観る。気持ちがとても暖かくなる。


 とつぜんフリーズした。


 バジーナと黒猫が改札に向かって、桐乃と京介が手を振っているところ。


 あ、あれ(;'∀')


 中古だからかなあ……残念に思っていると、フリーズした高坂兄妹の前にメイドさんが現れた。


「お久しぶりです、お嬢様(o^―^o)」


 ……それは、オフ会が行われたツインテールのメイド喫茶のメイドさんだ……お嬢様って? え? わたしのこと?


「そう、やくもお嬢様のことですよ! さっきは本題に入る前に走っていかれましたから(^▽^)」


 ゲ 妖怪メイド!? 


 なんだけど怖くない。アニメキャラだし、それも『オレイモ』のキャラだし。


「お話しておきたかったんです、太ってしまったとお悩みのようですが……」


「あ、その話題はなし!」


 ワイパーみたいに両手を振る(^_^;)


「いいえ、真実を知っていただかなければなりません。やくもお嬢様は、お太りになられたのではなく発育されたのです」


「同じことじゃ……」


「いいえ、出るところが出て、引っ込むところが引っ込んできたんです。ほら、ごらんください」


 高坂兄妹に変わって、リアルな体形のシルエットが出てきた。


「そちらが先月、で、こちらが現在。女性らしくなりましたでしょ、むろんお嬢様のシルエットでございますよ(⌒∇⌒)」


「え、あ、そ、そう(#0#)」


「そうです、もう十四歳でございますわよ(^▽^)/」




 そうだったんだ、親の離婚や引っ越しのドサクサで忘れていたけど、わたしってば十四歳になっていたんだ!




☆ 主な登場人物


やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生


お母さん      やくもとは血の繋がりは無い


お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い


お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い


杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き


小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている


霊田先生      図書部長の先生

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る