幕間・6 一人の女の独白

 面倒な事になりましたね。


 ーーー止めろ。


 嫌です。私がしている事は何一つ間違っていない。何を止める必要が?


 ーーー間違っている。何もかもが。


 その点について貴方と意見が一致した事はありませんでしたね。記憶が戻っても相変わらず優等生気取りですか。


 ーーーお前は悪だ。


 ならば貴方も悪でしょう?


 ーーーそうだ。だから止めた。止めようとした。


 ああ、本当に喧しい。貴方は所詮は妹。黙っていなさい。



 私はそうやって彼女の声を抑えつけた。耳障りな声が頭の中から消えて、私はほっと溜息を吐いた。


 しかしこれからどうしたものでしょうか。


 あの愚かなマクアめが早った末に失敗してしまったせいで、ドミネア教は利用出来なくなってしまいました。


 あのレイの事です。おそらく既にトマに接触して、私の事を伝えているでしょう。あの女はそのくらいの機転は軽く利かせられる、それは妹の裏からよく見せて貰いました。中々ーーー中々に厄介ですね。


 ですが、どこまで気付けるか。あの部屋が見つかったとて、全てが分かるわけではありますまい。


 ならば今のうちに別の事を進めるとしましょう。幸い、あの神の振る舞いからして、利用出来る世界の摂理はもっとあるのでしょうから。


 あるいは。いっそ。


 フフフフフフと思わず私は堪え切れず声を上げて笑ってしまいました。


 ああ、楽しい。

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