魔道カノンの脅威

いける。


それが戦況を後方から見ていた俺の実感であったし、闘っている前線の兵達、協力してくれている亜人族達も持っている確信めいたものであった。


皆生き生きしている。そして、敵兵は恐れおののいていた。


「なんだ、あれは?」


 遠方の高台に何か砲台のようなものが現れた。巨大な砲台。不吉な予感がする。

 

 砲台がら突如、光が放たれた。あれは魔法の光。魔法の力が凝縮した高エネルギー体だ。


 ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


 突如起こった大爆発。森が消し飛び、エルフ兵も敵兵も吹き飛んだ。およそ半径1キロ程の空間が灰燼と化した。


「う、嘘。何この威力……」シャロは慄く。


「あかんわ。あれうち等でも死んでしまうんちゃう?」


 バハムートさんも流石に恐れている様子だった。


「く、くそっ! せっかくいけると思ったのに!」


『フッハッハッハッハッハッハッハッハ! よく頑張ったよ! エルフの諸君! そして亜人族! そして鍛冶師の人間フェイ! まさか、僕にこの『魔道カノン』まで使わせるとはね。念のため持ってはきたけど、使うつもりはなかったんだよ! 君たちの反撃が思っていた以上だったからね。切り札を使うハメになった。いやいや、実に見事だったよ! 君たちがここまでやるとは思っていなかった!』


 ルードの声が聞こえてくる。恐らくは声を大きくする魔道具を使用しているのだろう。拡声器を使っているようだった。


『けど、わかっただろう! 一日だけ待ってやる! 言っておくけど妙な真似をしたらすぐにエルフ国に魔道カノンを撃ち込むよ! 降伏か、死か! どちらかを選べ! 降伏する場合、貢物としてユースティア姫を連れてこい! 僕が可愛がってあげるよ。クックックック! アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!』


 敵兵も攻めてくるのをやめた。撤退していった。


「どうするんや?」


 バハムートは聞いた。


「とりあえずはエルフ国に帰りましょう。その後の事はそれから考えましょう」


 シャロは提案した。


 こうして前線の兵士達及び援軍の亜人達はエルフ国まで帰っていく事となる。


 ◆◆◆


 魔道カノンの圧倒的な威力を見て、国王と宰相は絶句していた。


「い、いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! ものすごい威力ですね。魔道カノン!」


「ものすごい! いやぁ! これはもう我々、いや! 大帝国フィンの勝利は決定したようなものです! 流石はルード王子! 大帝国フィン!」


 国王と宰相は手もみをしていた。どうあがいても勝てない相手を目の前にして、逆らうような胆力は彼等にはない。逆らってはいけない相手だと認識した事で、余計に服従的態度をとるようになった。


「だといいんだけどねぇ。僕はまだ何かやってくる気がするよ」


「はぁ……そうなんですか?」


「さあ、どう出る? エルフ、鍛冶師フェイ。このままだとユース姫は僕のものだよ。まあ、彼女だけじゃない。エルフ国の男は打ち首だ。女は嬲り者にしてやる。それから協力した亜人もだ。同じ目に合わせてやる」


 ルードは不敵な笑みを浮かべた。


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