侵略されるエルフの国
俺達がエルフの国も戻ろうとしていた時の事だった。俺達は空からその様子を眺めていた。
燃えている。エルフの森が。さらには銃声が聞こえてきた。そして、凄まじい喧騒がする。
間違いない。戦争だ。大帝国フィンがエルフ国を攻めいってきているのだ。
「う、嘘! なんでですか! 開戦まで一週間はあるはず!」
ユースは慌てていた。
「あいつ等の言っている事なんて信用できるはずがない! 最初から油断させてだまし討ちをするつもりだったんだ!」
シャロは憤っていた。
「シャロのいう通りだ。侵略しようとしてくる相手に正々堂々だとか、そんな事言えるわけもない! これは戦争なんだ! だまし討ちや奇襲くらい、当然のように大帝国なら仕掛けてくる」
しかし、どういう魂胆だ。最初はあんなにエルフ国を舐め腐っていたではないか。だから俺は大人しく開戦の時を待つかと思っていた。
まさか、俺達が他種族に援軍を求めている事を知ったのか。それで先手を打って制圧しようとした。
その可能性は大きかった。
「ともかく一旦はエルフ王のところへ戻ろう。現状を把握するのが先だ」
「「はい!」」
「フレイムさん! あの城のところへ降りてくれ」
「はーーーーーーーーーーーーーーーーーーい! わかったーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
フレイムさんか滑空していく。そして、エルフ城へ降り立った。
◆◆◆
大帝国フィンの事。開戦予定日より二週間程前の事だ
「うーん。素晴らしい光景だ」
大帝国王子であるルードは部隊の軍事訓練を見て、悦に入っていた。特等席から大量の兵士の訓練を見ている。皆が最新の武器を装備し、そして訓練のされた兵士だ。
圧倒的な軍事力を目の前に、ルードは勝利を確信していた。昼間からワインを飲み、女を侍らせるほどの余裕があった。
ルードは王子であると同時に、今回の侵略戦争の指揮官でもある。総司令と言えた。
「ルード王子!」
「大変ですぞ! ルード王子!」
国王それから宰相が大慌てで駆け寄ってきた。
「なんだ? どうしたんだ? そんなに慌てて」
「エルフ国の事であります!」
「エルフ国? それがどうかしたのか?」
「エルフ国が他種族に援軍を求めているらしいですぞ!」
「そして、さらにはいくつかの種族は協力を承諾したようです!」
「へー。そんな事をしてたんだ」
ルードはさして慌てもせずそう呟くだけだった。国王と宰相と違い、想定の範囲内といった感じであった。流石に頭の回転が違った。想定内だからショックを受けていないのだ。
「まあ、考えられそうな事だよね。僕たちに対抗するために、徒党を組もうって魂胆なんだ。弱者が考えそうな戦略ではあるよね。けど想定の範囲内だよ」
「ど、どうしましょうか?」
「簡単だよ。もう討って出る。連中は開戦を二週間後だと思っているからね。今から軍を移動させれば一週間程度でエルフ国につくよ。奇襲をかけるんだ。強者であるはずの僕たちが奇襲をしかければ、エルフ国は大慌てさ。本格的な防衛網は引けていないだろう。効果的に戦局を進める事ができる」
「な、なんですと……実に卑怯ですな」
「卑怯? 何を言ってるんだ!? これは戦争だよ! 卑怯を糞もあるか。騙される方が悪いんだ! 戦争には良いも悪いもない。勝者と敗者がいるだけだ」
ルードはにやりと笑った。
「エルフ国制圧軍、全軍に命令する! 今すぐ進軍を始めろ! エルフ国を攻め落とすんだ!」
ルードは命令する。軍事演習をほどほどに。それよりも先手を打つ事を優先し、制圧軍を動かしにかかったのである。
「さあ、どう出るエルフ国。そしてあの鍛冶師、確かフェイとか言ったな。このままではエルフ国の美姫ユースティア、それから妹のシャロティア。城にいるメイドも全部僕の奴隷だよ。僕たちが勝利した暁には、君の前の前で犯しぬいてあげるよ。クックックックック! アッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
ルードの哄笑が響いた。
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