レオとの決闘

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「なんだなんだ! よそ者と獣人王様との一騎打ちか!」


「相手はエルフ国のお姫様らしいぞ!」


 獣人は好戦的で血の気が多い。戦闘以上の見ものはないようだった。


 広場には多くの人だかりができていた。


「ルールは簡単だ。何でもありだ。相手がギブアップした方が負け。ただ殺すのはだめだ。お前みたいなべっぴんさん殺すのは惜しいだ」


「私の方としても獣人の王を殺すわけにはいきません。外交問題になりますので」


「ただ、それ以外はOKだ。どんな手段を使ってもいい」


「……ええ」


「シャロ……」


「大丈夫だよユース。俺達で見守ろう。シャロには俺が授けた聖剣レーヴァテインがある」


 俺はユースの肩を抱き寄り添う。


「はい。大丈夫だといいんですけど」


 やはり姉だ。妹の事は心配なのだ。だが、これから俺達の目の前には多くの災厄が襲い掛かってくる事だろう。


「ミーシャ! 何か音を出せ!」


「大鍋を棒でたたけばいいか!」


「構わん! エルフの女、それが合図だ! 存分にやりあうだ!」


「望むところだ!」


「せーの!」


 ミーシャは民家から拝借した大鍋を鉄棒で叩いた。


 カーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!


 甲高い音が響く。


「おっらしゃああああああああああああああああああああだあああああああああああああ!」


 奇声を放ちつつ、レオは襲い掛かる。鋭利な爪を取り出す。


「くっ!」


 シャロは爪を剣で防いだ。


「良い剣だ。けど剣士の腕の方はどうだ!」


「負けるものですか!」


 シャロはレオを跳ねのける。


「おっとだ!」


 レオは抜群の運動神経で難なく着地をした。


「さあ! 次に行くだ! てえらあああああああああああああああだあああああああああああああ!」


 レオは今度は鋭利なその牙を持って、襲い掛かる。早い。驚異的な移動速度だ。だが、シャロであれば捕らえられない程ではない。

 牙を剣で受け止める。


「やるだ……なかなかやるだ」


 レオは感心した様子で呟く。


「シャロ! 今だ!」


「え!?」


「レーヴァテインに念じろ! レーヴァテインは炎の聖剣だ! 炎の加護スキルを得ている」


「わかりました。聖剣レーヴァテイン! 私に力を貸してください! プロビデンスフレイム!」


 シャロはレーヴァテインのスキルを発動させた。紅色の剣が炎を纏う。


「あちっ! あついだああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーー!」


 炎が燃え移ったレオはゴロゴロと転がりまわる。


「まだやりますか?」


「降参だあああああああああああああああああああああーーーーーーーーー! その代わり水をかけて欲しいだあああああああああああああーーーーーーー! 燃えて焼け死ぬだーーーーーーーーーーーーーー!」


「やった! シャロが勝ったよ! ユース」


「はい! フェイ様! やりました!」


「獣人王様ーーーーーーーーーー! 大丈夫かにゃああああああああああああああ!」


 ミーシャは井戸から水をくみ上げ、レオにかけた。


「ぷっはあーーーーーーーーーーーーーだ。死ぬかと思っただ」


「それでレオ様。お約束通り」


「わかってるだ。俺の負けだ。お前らに力を貸せばいいんだ」


 レオは渋々認めた。


「けど、すっげーーーーーー武器だっただ。誰が作っただ?」


「このお方です。人間の鍛冶師でフェイ様と言います」


「そうか。やっぱ武器はすげえな。自分の身体だけじゃ限界があるものな」


「ええ。レオ様はとてもお強かったです。私もフェイ様の武器がなければ勝てていたか、怪しかったです」


 シャロは評する。


「……そうか。武器か。戦争になるなら俺達も必要になるかもしれねぇだ。作ってれるかだ? 人間の鍛冶師。フェイと言っただか?」


「ええ。勿論、味方になってくれるなら鍛造しますよ」


「そうか。ありがとうだ。また詳しい話を決めるだ。いつ、何人くらいをいつまで派遣するか、細かく決めるだ」


「ええ。わかっております。エルフ国との間で協定を設けましょう」


 こうして俺達はドワーフ国に続いて獣人国との協定を結んだ。







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