続いては獣人の国へ
「おお! なんと! あのドワーフの国との援軍を取り決めてこれたのか! フェイ殿!」
その報告をエルフ国に持ち帰った時、エルフ王は大喜びをしていた。
「ええ。何とかなりました」
「これもフェイ殿のおかげじゃ。これで肩の荷がひとつおりたわい」
「ですが、お父様。ドワーフ国から援軍が得られたとはいえ、それだけで大帝国を退けられるとは思えませぬ」
「そうじゃ。まだまだ我々の戦力は不足しておる。連中に一泡吹かせるには程遠い。そうなると、さらなる援軍を他種族から取り付けてこなければならんだろうなぁ」
「お父様。獣人の国はいかがでしょうか?」
ユースはそう提案する。
「獣人とな」
「はい。獣人は確かに気性の荒い、攻撃的な種族ではありますが、身体能力が高く、戦力になりえます」
「だがのぉ。なんのツテもない獣人とどうやって」
「ともかく行って見なければどうしようもありませぬ」
「うむ。そうだの。前回と同じく、お前たち三人で使者として獣人の国に行ってきてくれ」
「「了解しました。お父様」」
二人は平服する。
「わかりました。国王陛下」
俺もそれに倣う。俺がお父様では変だろう。
「では行ってきてくれたまえ! 獣人の国へ」
「「「はい!」」」
俺達は向かう。次なる目的地は獣人の国だ。
◆◆◆◆◆
「っと……もうすぐ獣人の国だよな」
「ええ。もうすぐのはずです」
ジャングルのような森をコンパスと地図を頼りに進む。
「なんだか、声がする」
声がした。少女のような声だ。
「ふんふふふふーん♪ ふふふーん♪ ふーん♪」
そこには小さな湖があった。俺達は物陰から覗き見る。猫のような耳をした獣人の少女だった。
とんでもない美少女ではあるが、覗かれているとも気づいていない彼女はその健康的で美しい裸体を思う存分に晒して水浴びをしていた。
どことなく元気で活発な印象を受ける少女だった。獣人の種族性によるものかもしれない。
「フェ、フェイ様! あまりジロジロと見ないでください!」
ユースが俺に怒鳴ってきた。
「ジロジロ見てなんかないよ!」
「本当ですか?」
「ともかくこの場を離れた方が良さそうです。獣人相手にいらぬ誤解を与えてしまいかねない」
俺達はぞろぞろと移動を始めた。その時だった。俺は小枝を踏んだ。
ピシィ! という音がする。
「だ、誰にゃ! 誰かそこにいるのにゃ!」
やばい。完全にバレた。俺達は姿を露見してしまう。
「エルフの女はともかく、人間の男! ミーシャの裸を覗き見てたにゃ! 変態にゃ! 覗き魔にゃ! 絶対許さないにゃ!」
「ま、待ってよ! 不可抗力だ!」
「う、うるさいにゃ!」
獣人。自分でミーシャと言っていたな。ミーシャは猫のような鋭い爪をむき出しにして、完全に攻撃態勢に入っていた。
――と、その時だった。
「ん? なんだにゃっ!」
湖の奥深くから、強烈なクロコダイルが出てきたのである。
「うにゃあああああああああああああーーーーーーー! ワニにゃあああああああああああーーーーーー! どうしてこんなところにワニがーーーーーーーー! 食べられるにゃああああああーーーーーーー!」
ミーシャは大慌てだった。見捨てるわけにもいかない。
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
クロコダイルは口を大きく開けてミーシャに襲い掛かってきた。
「うにゃああああああああああああーーーーーーーーー! もう終わりにゃあああーーーーーーーーー! 死ぬにゃーーーーーーーーーーーーーー! 短い命だったにゃーーーーーーーーー!」
「食らえ!」
俺は護身用に持ってきた魔剣グラムを引き抜く。
ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
クロコダイルは爆発により吹き飛んだ。
「うにゃ? 助かったのかにゃ」
「ふう。何とかなった」
「ありがとうなのにゃ! 人間! あなた様は命の恩人なのにゃ!」
獣人の少女。ミーシャは俺の手を握ってくる。
「う、うん。どういたしまして。それより服を着てよ」
「うにゃ!? わ、忘れてたにゃ!? ミーシャ今裸だったにゃ!?」
慌ててミーシャは服を取りに行く。
◆◆◆
「それでエルフ、それから人間の男。この近くには獣人の国しかないにゃ? 他は大体森が続いているだけにゃ? そんな辺鄙なところに何をしにきたのにゃ?」
「私達は獣人に援軍の要請をしたく、この地に馳せ参じました」
「援軍の要請? 誰かと闘うのかにゃ?」
「はい。人間の大国。大帝国フィンと闘うのです」
「ミーシャに言われてもわからないにゃ。けど獣人の国に案内する事くらいはできるにゃ」
「それで構いません。十二分にありがたいです」
「詳しい話は獣人王様として欲しいにゃ!」
「はい。お話できれば幸いです」
こうして俺達はミーシャを助けた事により、獣人の国へとすんなり入国していく事ができたのである。
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