ドワーフの国へ
まずは俺はユースとシャロを引き連れてドワーフの国へと向かった。
ドワーフの国はエルフのような豊かな緑に囲まれた場所にはなかった。荒れ果てた大地、そしてその洞窟にあったのだ。
「なにものだっ! お前ら!」
「何者だ! よそ者が何の用だ!」
当然のようにドワーフの国にも守衛というものが存在した。木製のハンマーを持った背の低い男達である。顔は間違いなく中年なのではあるが、背は子供くらいしかない。
「私達はエルフの国から来た使者です」そうユースは言った。
「エルフ!? エルフが何の用だ!」
独特のなまったイントネーションでドワーフは言ってくる。
「もうすぐエルフの国に人間の国大帝国フィンが攻め入ってきます」
「人間の国に攻め入ってくる!? それがドワーフに何の関係がある!?」
それを言われると見も蓋もない。所詮は対岸の火事だ。
「人間の国は恐ろしい力を持っています。いずれはドワーフの国にも攻め入ってくるかもしれませぬ。今のうちに一致団結し叩いておくのが上策かとエルフ王は考えているのです」
「守衛の俺らにはそんな事言われてもわからん! 王様に訊いてみないとわからんだ!」
「それもごもっともであります」
「そこで待ってろ! 王様に訊いてくるから」
「はい。エルフの王女ユースが来たとお伝えください」
「わかっただ」
守衛は洞窟の奥へと行った。小一時間待たされる。
「入って良いって言ってただ」
「ありがとうございます」
「おらの後ついていくるだ」
守衛一人に案内される事となる。
薄暗い洞窟を松明の灯りを頼りにひたすら進み続ける。
しばらくして洞窟の中に、大空洞があった。多くの土性の建築物が並んでいる。
「これがおら達、ドワーフの国だ。一番大きい建物が王様の城だ」
一際大きい土の建物があった。そこへ案内される。
「着いただ。じゃあおらの案内はここまでだ。おらは守衛に戻るだ」
置いていかれる。ギィィ。門は木製であった。鈍い音をして門が開かれ、城の中に入って行く。
「何の用だ!? エルフの姫様!?」
声が聞こえてきた。先ほどの守衛と同じように中年の見た目をした子供のような背の男だ。金ぴかの冠が王様の印のようだった。
「ドワーフ王。この度我々エルフは貴国に援軍の要請に参りました。もうすぐ大帝国がエルフ国に攻め入ってくるのです」
「それは聞いただ。だが、それがおれらに何の関係があるだ?」
「今は直接の関係はありません。ですが近い将来、大帝国の影響は貴国にも及んでいく事でしょう」
「おれ等の国の女子(おなご)はみんなちびのずんどーだ。おめえらエルフのようなべっぴんさんはおらん! おれらが狙われるとはとても思えんだ!」
流石はドワーフの王だった。自国民を馬鹿にしているようではあるが、冷静で客観的な評価だった。鋭かった。確かにエルフ国が狙われたのはエルフが美しいからというのが要因のひとつだった。美しいものはそれだけ人の心を駈り立たせる。
「それなのに何の義理もないお前らエルフの為に国民を命の危機に晒せっていうのか? 国王としてそんな事は許せないだ」
「それは全くその通りであります」
天秤のつり合いだ。誰もが利益と損失を考えている。つり合いがとれなければ交渉はまとまらない。
「さあ、帰ってくれ! 話は終わりだ! おれたちはお前達エルフに用はないだ!」
「待ってください!」
――そんな時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
地震が起きた。
「地震だ……」
「国王陛下! 大変ですだ!」
木っ端のドワーフが駆け込んできた。
「なんだだ!?」
「さっきの地震で岩がいくつも落っこちて来て、建物がたくさん壊れただ」
「なんて事だだ。現場の確認にすぐに向かってくるだ!」
「わかりましただ」
「ユース……これはチャンスかもしれない」
俺は言った。
「え? この地震が?」
「俺の力でドワーフに貸しを作れるかもしれないんだよ」
この地震は俺達にとって追い風になるかもしれない。そう俺は考えていた。
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