宮廷鍛冶師、贋作しか作れないと追放されたが実は本物の聖剣や魔剣を鍛錬できていた~俺の代わりが見つからずに困り果てているらしいが、もう遅い。エルフの皇女に溺愛された鍛錬ライフが最高に楽しいので~
鉱夫達と北の鉱山へと向かう 大岩を破壊し、貴重な鉱物を手に入れる
鉱夫達と北の鉱山へと向かう 大岩を破壊し、貴重な鉱物を手に入れる
「ふぅ……なんだったんだ。あれは」
国王と大臣が帰った後、俺は溜息を吐く。あまり見たい顔ではなかった。
「お帰りになられましたね。けどよかったです。フェイ様を引き抜かれたら私としてはいかがすればいいかと悩んでおりました」
ユースティアは胸を撫でおろす。
「心配しないでいいよ。俺はどこにも行きはしない。行き場をなくしていた俺をこんな良い環境で拾ってくれたのは君たちエルフだからね。君たちを裏切るような真似はしないよ。仮に君たちより良い待遇で雇ってくれる国があったとしても俺はそっちへ移ったりはしないよ」
「そう言って貰えると大変嬉しく安心しますわ。フェイ様」
「っと。それじゃあ、俺はそろそろ仕事があるから」
「仕事ですか? いつもの工房での仕事ではなく」
「うん。工房での鍛錬は俺の主な仕事だけど、やっぱり良い武器や装備っていうのは良い素材があってこそだからね。どれだけ鍛冶師が懸命に鍛錬しても素材がいまいちだとやっぱりそれなりのものしかできない。エルフの国は豊富な資源に囲まれている。北の鉱山に鉱夫と出向く予定なんだ」
「へぇ。そうなのですか。気を付けていってらっしゃいませ。くれぐれも無理をなさらないように。フェイ様は我々エルフの国の宝なのですから。お怪我でもされれば困ります」
「ああ。安心してよ。無理はしない。怪我しないように気を付けるから」
こうして俺はエルフの国を出て、北の鉱山へと向かった。
「……へへっ。国の英雄様に同行して貰えるとは光栄ですだ」
「英雄だなんて、言い過ぎだよ」
俺はエルフの鉱夫達と北の鉱山を目指す。当然のように徒歩だ。高所への移動に馬車は向いていない。
鉱夫もエルフの国にとっては重要な仕事だ。資源を採掘する上でやはり鉱夫は欠かせない存在である。そして俺にとっても取れる鉱物は重要だった。
やはり鉱物により作れる武具の精度は大きく変わってくる。それは先ほど説明した通りだ。
「そんなことはありませんだ。あなた様のお力はこのエルフの国にとってもっと必要になってくる。そんな予感がしてるんですだ」
エルフの鉱夫は粗野な感じがするが根は良い人ばかりだ。そのざっくばらんな態度も肩苦しくなくて居心地がよかった。
「その期待に応えられるように俺も頑張るよ」
「っと。着きましただ。ここが北の鉱山ですだ」
「そうなんだ。ここが。どういう鉱物が取れるの?」
「鉄や銅など基本のものから、奥まで掘り進めれば稀に金や銀、プラチナなどが出てくる事がありますだ。それから宝石。さらにその奥まで進めれば」
「進めれば?」
「さあ。わかりませんだ。そこまで掘り進めた事がないので。とにかく中に入ってみますだ」
「ああ。そうしよう」
俺達は鉱山の中に入って行った。行き止まりに行き当たる。
「ここですだ。この奥から岩が堅くて」
目の前にあるのは大岩だ。ビクともしなさそうだ。
「俺達のツルハシじゃ、どうしようもねぇんだっ!」
鉱夫達はツルハシを見せた。ボロボロのツルハシ。確かにこのツルハシでは掘り進めるのは難しそうだ。
「頼む! 鍛冶師フェイ様! 俺達のツルハシをもっと良いやつに変えてくんなまし!」
「俺達はこの先の景色が見てえんだ!」
俺は大岩を確認する。手で叩いたり、ハンマーで硬度を確かめる。
「どうですだ? いけそうですだ?」
「ああ。何とかなると思うよ」
「本当ですだ!」
「流石ですだ! 流石は伝説の鍛冶師フェイ様ですだ!」
「ありがてぇ! ありがてぇですだ!」
「喜びすぎだよ。だって俺まだ何もしていない。これから帰ってツルハシを鍛錬してくるよ」
「ありがとうですだ! 鍛冶師フェイ様!」
「フェイ様がいれば100人力ですだ!」
「だからまだ何もしてないって。喜び過ぎだよ」
俺は苦笑した。現場を確認した俺達はエルフの国に帰る事になる。
◆◆◆
俺は工房に帰る。
「フェイ様、今回はどのようなものを作るのですか?」
「ツルハシだよ」
「ツルハシですか」
「炭鉱に使う道具なんだけど。エルフの国で使っているツルハシはただの鉄製のものだから、何を素材にしても強度としてはあがるだろうね。今回もミスリル製のツルハシを作るよ。軽くて丈夫だからね」
「そうですか」
「ただあの大岩はそれだけじゃ大変そうだ。ミスリル製のツルハシでも何日もかかるだろう。だから別物を用意しておく」
「別物ですか?」
「ああ」
こうして俺はミスリル製のツルハシと、それから別物でもうひとつ切り札を錬成する事にした。
◆◆◆
「こ、これがミスリル製のツルハシですだ!」
「鉄より軽いですだ! さらには鉄より丈夫なんですだ! これは便利な代物を頂戴しましただ!」
ミスリルツルハシを渡された鉱夫達は大喜びだった。
「ありがとうございますだ! このツルハシがあれば作業効率が大幅にあがりますだ!」
「まだ終わってないよ」
「え? まだ何かあるんですだ?」
「これだよ!」
俺は隠していた布をめくる。
「こ、こいつはなんですだ!」
「ドリルだよ」
「「「ドリル!?」」」
渦巻いている鋭利な物体。それがドリルだ。
「ああ。このドリルは魔法の力で回転するようになっているんだ。この螺旋のような形状は掘削においてかなりの効率がいい代物で。あの大岩だって多分すぐに壊せると思うよ」
「ドリルだって!? そんな便利なものがあるんですだっ!」
「鍛冶師フェイ様万歳! 万歳ですだーーーーーーーーー!」
「だから喜びすぎだって。早速北の鉱山に行って採掘をするとしよう」
「「「はいですだ!」」」
俺は鉱夫達と北の鉱山へ向かった。
◆◆◆
「こいつが大岩ですだ」
「ああ。改めて見ると物凄い大きな岩ですだ」
「本当にこんな大きい岩破壊できるのか疑問ですだ!」
「馬鹿いうなっ! 鍛冶師フェイ様のお力を信じろ!」
「……さて。じゃあ、ドリルを起動しよう」
ドリルが動いた。先端がぐるぐる回り始める。
「動いたですだ」
「誰かこのドリルで岩を削ってみてよ」
「は、はいですだ! ではおいらたちが!」
鉱夫達数名でドリルを運ぶ。
「「「せーのっ!」」」
するとドリルはいとも簡単に大岩を掘削していくではないか。
「す、すごいですたっ! 大岩がするすると掘れていきますだ!」
「すごいですだっ! こんなすごい道具見た事もねぇ!」
「鍛冶師フェイ様は天才ですだ!」
「喜んでくれてるみたいで俺は嬉しいよ」
ドリルにより、大岩はいとも容易く掘削された。そして俺達は鉱山の奥深くまで至ることができたのである。
◆◆◆
鉱山の奥深くは空洞になっていた。その空間は薄暗いはずなのに光り輝いていた。
「み、見てくださいだっ! 貴重な宝石や金属がこんなにっ!」
「ダイヤモンドにエメラルド! それにプラチナやゴールドが至るところに!」
それよりも俺は目を見張るものがあった。
奥にあった輝ける金属。光を放つ輝く眩しい鉱物。それから七色に輝く鉱物。これは。どちらも実物を見るのは初めてだった。
オリハルコン。それからアダマンタイトだ。
「オリハルコンとアダマンタイトだ」
「オリハルコンとアダマンタイト! そんなもの伝説でしか聞いた事のない鉱物ですだ!」
「すごいですだ! 北の鉱山にそんな貴重なものが眠っていたとは思ってもいませんでした!」
「これなら作れるよ。もっと優れた武器が。きっと伝説と言えるような一品を」
お伽話でしか聞いた事のないような武器や武具を作れるのではないか。
俺は今からオリハルコンとアダマンタイトを使って鍛錬する事に対して、高揚感を抱いていた。
ドキドキとワクワクが止まらなかったのだ。
こうして北の鉱山での採掘は大成功で終わったのだ。
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