第46話 挑戦状
「翔君に枯葉君、それと剛君。ちょっと用があるのだが来てくれるか?」
「良いけど用って?」
俺と桜見、翔の三人で雑談に興じているとおっちゃんが俺たちを呼びに来た。
用事があるようだが一体何なのだろうか。
「……さて、儂の予知では五時間後No.50がここに現れると出た。それも一人だ」
「アイツが……」
敵が現れるポイントを地図で指差しておっちゃんは示す。
翔と桜見は何やら思うところがあるのだろうか、息を呑んで緊張した雰囲気に。
それもそのはず。
確かこのNo.50ってのは、以前桜見と翔に大ダメージを与えた張本人なのだから。
「が、あんなことがあった後だ。儂の予知も過信は出来ん。しかしこれを放置する訳にもいかん」
「だから偵察目的で、僕たちに行ってきてくれっていう事?」
「そうなるな。相手はとんでもない強敵だということは、君たち……特に翔君は儂より遥かに知っていることだろう。それでも、君たちなら敗北することは絶対にないと踏んでいる。頼まれてくれるか?」
俺たちは顔を見合わせる。
答えは全員決まっているみたいだった。
「うん、清弘さん。あたし達に任せて」
「ありがとう。……君たちともかなり長いが、本当に頼もしくなったな」
君たちと言うのは多分俺を指しての言葉ではない。
翔と桜見の事だろう。
そういえば、昔の二人ってどんな感じだったんだろう?
「でも、清弘さん。アイツの事をよく知ってるのは、僕じゃないよ。僕なんだけど、僕じゃない……まぁ、それは断る理由にはならないけどね」
「えっと、五時間後なんだよな?」
「ああ。頼んだぞ」
「「「了解!」」」
………………
「……よ、待ってたぜ。アンタらが来てくれると踏んで来て正解だったよ」
「何の用?戦闘だとしても僕たちは応じるよ」
そのポイントに到着すると、そこには既にNo.50が立っていた。
そして、俺はその姿に強烈な既視感を覚える。
アイツは……アイツは……
「No.1さんも、夏祭り以来だな」
「!?」
そうだ、この世界での夏祭りの日、俺が遭遇したのはコイツだ。
さっきまでも解いていなかった警戒を無意識により強める。
「今日は他でもない。俺と、俺たちと因縁のあるアンタら三人に対して挑戦状を渡しに来た」
「挑戦状?」
「そうだ。いや、果たし状の方が正確か」
「……それは、レボルブの作戦の一環?」
「まさか。コイツはアンタらとの個人的な因縁に決着を着けたい俺たちの独断だ。応じるも応じないもアンタたちの自由だが、どうする?」
「待て。俺とお前の間にそんな個人的な因縁はないだろ」
「……そっか、覚えてねぇのか」
No.50の口ぶりからして俺はかつて、俺が忘れた記憶のどこかでコイツとの因縁を作っていたらしい。
「時間は明日の午前四時。もう一回ここに来る。俺たちも三人だから一対一を三つ同時にやることになるな。そこに来れば応じたと見なすし、来なければ応じなかったとして認識する。じゃ、楽しみに待ってるぜ」
そう言ってから、No.50は去っていく。
途轍もないスピードで。
俺が能力をフルに使ってもきっと、あのレベルには届かない。
それほどの速さをNo.50は、当然のように叩き出した。
けれど、怖気付く訳にはいかない。
翔と桜見に、戦わないと言う選択肢はないようだった。
俺もこの戦いから得る大きなものが何かあるだろうと、なんとなく感じ取っていた。
なら、応じよう。
そして、生きて帰るんだ。
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