第31話 己が内に何が眠る

YKKAP作戦から翌日。

作戦が成功して二人がくっついたのかは正直分からない。

多分聞いてもはぐらかされる。

ただ皆から既に付き合ってるか、そうじゃなくてもその内くっつくと言われる程に素で仲が良いので時間の問題だろう。

恋のキューピッドは俺たちでも何でもなく時間なのである。

もっとも、あの二人が両想いという確証は誰も持たないのだが。

そんな感じで温かく二人を見守るものの訓練は当然続くわけで。


「さて剛、今日の訓練の前にこれを見てほしいんだ」

「何これ、何の映像だ?」


だがどうやら訓練の前に何かあるらしい。


「これは君が初めて訓練をした時。将也と才能を見るために軽い実戦的な訓練をした練習の映像だよ」

「でも何でこの映像?確かこれ最初に俺が倒れたんじゃ?」


俺の言葉に翔は首を横に振る。


「でもあの時、俺は意識を失って……」

「なるほど、やっぱり意識はなかったんだ」

「どういうことだよ、早く教えてくれ」

「そうだね、ごめん。とりあえずこれを見て」


動画が再生される。

新雲から開始の合図がかけられた瞬間、俺は意識を失う。

……はずだった。


「どういうことだよ……これ……」


画面には、ひたすら新雲に殴りかかる俺が映っていた。

流石に新雲は全て捌いているが、それでも困惑はあったことだろう。

そして明らかにおかしい要素がもう一つ。

それが俺の身体能力。

自分で言うのもだが、俺の身体能力は一般的な基準で言えば高い方に入る。

だがそれはあくまで一般的な話。

そんな基準で測られたものは高かろうが低かろうが、この世界では大差ない。

だが俺の身体能力は、明らかにその一般的な人間の域を凌駕していた。

あの時の俺は能力の使い方をあまり分かっていなかったし、今でも使いこなせてはいない。

なのにこれだけの身体能力を実現させているのは素の力か、あるいは能力でもない他の何かによって力をもたらされているかのどちらかとなる。

いずれにせよ、奇妙だった。


「……そしてこの訓練の後、剛のその力を見ることはなかった。この原因は何なのか。そもそもあの常人の域を越えた力はどこから出てきたものなのか」

「何か、思い当たるのか?」

「一つだけ、ある」

「……教えてくれ」


俺の中に何があるのか。

事実かどうかはさておき、一つの仮説でも知っておきたい。

……それが、大きな地雷である可能性を考慮せずに。


「あくまで仮説だから過信はしないでほしい。まず、剛は記憶喪失なんだよね?中二くらいまでの記憶が一切ないとか」

「ああ。おっちゃんに聞いたのか?」

「そういうこと。素の身体能力ではない何かからの力でこの力を得たと仮定して、ドーピングなんてのはあり得ない。であれば何が考えられるか」


息を飲む。

なんだ、この胸騒ぎは。

胸の奥で、何かが蠢いている。

何があるんだ。

この映像の中に、俺の内側に。

どんな真実が眠っているんだ。


「表には知られてないけど、世界には人間に対して身体能力を劇的に向上させる機械を体に埋め込む技術が存在する。だがそれを所持しているのは当然僕らではなければ、世界の名だたる大国たちでもない」

「じゃあ……だ、誰が……」


先が気になる俺の心とそれを拒絶する何かがせめぎあって言葉を紡ぐのを阻害する。

でも言葉を紡ぎ、翔にその先を求める。


「レボルブさ。彼らだけが、この技術を所持してる。……もう、言いたいことは分かったみたいだね」

「まさか……まさか……」

「ああ、剛。君は恐らくかつて……」













「レボルブに属する人間だった」

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