一口で読める『まんじゅう小説』つぶあん編

蟹味噌 崇太郎

相思相愛

すさまじい形相の閻魔大王を前にして、男は最後の審判を受けていた。


「さて、男よ。生前のお前の行動を総合的に判断すると…」


「…はい」


「………おめでとう。極楽行きじゃな」


「あ、ありがとうございます!」


「最後に何か望みがあるなら言うといい。極楽行きが決まったものへの特典じゃ」


「では…できるだけ長生きしてほしいのですが妻もいずれはこっちに来ます。……生前は散々迷惑をかけてきました。しかし私には彼女が必要です!もし妻が望むのなら来世も私と妻とを一緒にしてもらえないでしょうか」


「うむ…深く美しい妻への愛。奥方ももしそれを望むのならば、そうなるよう取り図ろう」


「よろしくお願いします。それでは失礼いたします」


「うむ、達者でな」


数年と数か月、妻も閻魔大王のもとへとやってきた。


「さて女よ。何か望みがあるなら言うといい。極楽行きの特典じゃ」


「では…数年前に主人がこちらへ来たと思います。…もしよろしければ来世もあの人と一緒にしていただけませんか」


「うむ。あっぱれ!素晴らしき夫婦の絆。あの男も実は同じことを言っておったのじゃ。よろしい、お互いに前世の記憶はなくなるが来世も夫婦として一緒になれるようにしておこう。来世も二人で仲良く暮らすとよい」


「あ、いえ、一緒にしていただくという事には変わりないのですが…」


「ん?」


「あの人は犬か猫にでも…つまり、飼い主とペットの関係にしていただけないでしょうか?」


「………」


「あら、もしかしていけませんか…ダメなら金魚でも構いませんわ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る