魔法少女戦線 極彩色の侵略者と真紅の少女
白林透
第1話 プロローグ 北極奪還と伝説の二人
「私はッ、
北極点、高度四百メートル。
海面から無理やり割り剥がされ、天にそそり立つ一キロ級の巨大な氷の壁。
両の足を氷に食い込ませて垂直に起立する真紅の少女が叫ぶ。
艶のある褐色の髪は首の後ろで
彼女が
見据える先は遥か地上。
未知の技術で形成された巨大なドーム型のワープゲートだ。
その直線を塞ぐように、虹色の
其々、巨大な口の
垂直に近い氷壁を蹴って駆け出す。残された時間は少ない。
彼女の衣装は
ゲート破壊に赴いた魔法師、魔法少女の殆どが
亀に似た巨体が、六本の脚の形を変化させて、触手のようにしならせた。
一つ一つがビルのようなサイズのそれら全てを少女は手にしたハンマーで軌道を変えて交わし、更に反動を利用して加速。化け物の頭部に深々とハンマーを叩き込む。
だが――、
「どけぇえええ!」
ハンマーの先端が熱せられたように
「チッ!」
敵を砕くと同時に、ハンマーも粉々に砕け散った。
少女はすぐさま腰に手を当てる。
そこには赤いガラスのように
触れると同時に輝いたそれは、一瞬で大ハンマーへと姿を変えた。
今更、個数は問題ではない。あと一分も持たずに変身は解ける。
この一本で十分。
腕や尻尾は使わない、本体での突撃だ。
巨大故に軌道をずらして回避するのは不可能。まるで巨大な壁が迫ってくるようだ。
大きく上段にハンマーを振り被る。ゲート破壊のエネルギーは
超大型個体との真っ向からの打ち合いは未だ経験が無かった。破壊できたとして、弾き飛ばされる可能性もある。
それでも――、
決意とは裏腹に、彼女の
「まさかティナ?」
「遅刻してごめんね、ユメコ。貴方の無茶な氷山割りのおかげで
鮮やかなブルーの修道服に似た戦闘服に身を包んだ少女が、すぐ後ろを
手には身の丈ほどもある、老木のようにうねった杖を握っている。
「ティナは離脱して。後は自分が」
「冗談、せっかくメインディッシュに間に合ったのに。手柄の独り占めは許さないわ」
特に合図するでもなく、二人は示し合わせたように化け物を一体ずつ破壊する。
見事なコンビネーション。
残るは無防備になったゲートただ一つ。
しかし――、
「くっ……」
二人の手から武器が消失する。戦闘服も爪先から剥がれ始めている。
限界が近い。空中の氷を蹴り込み更に加速。
果たして、間に合うだろうか?
互いの視線が交錯する。
「余裕がないのはお互い様」
「だけど、これが最後なら――」
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